倉庫を売るならどこの業者に頼めば良い? 実際の流れや気を付けたいポイントを解説

使っていない倉庫をそのまま保有するのは、維持する手間や費用、税金がかかってしまいます。しかし売ってしまえば、現金化できるだけでなく、こうした手間や費用もかかりません。どのような流れで売り、どのような点に気をつければ良いのか紹介します。

倉庫を売る際の流れ

まずは倉庫を売るまでの流れを見ていきましょう。

不動産会社に査定を依頼する

倉庫を売るとき、自分で価格を決めて買い手を探すのは大変です。いつまでも買い手が見つからず、交渉や手続きでトラブルになる恐れもあります。そのため、不動産会社に依頼して価格を決め、買い手を探してもらうのが一般的です。

一口に不動産会社といっても、それぞれに強みとするところは異なります。知名度が高いから希望どおりに売ってくれるとは限りません。最初からひとつに絞らず、複数の不動産業者に声をかけて比較できるようにしましょう。

不動産会社による査定

不動産会社に依頼すると、倉庫がどれくらいの価格で売れるのか査定を行います。査定には机上査定と訪問査定の2種類があり、前者は物件の情報を元に、似たような物件の相場や過去の取引実績、路線価などから査定する方法です。

さらに後者は実際に現地で物件の状態を確認します。物件の状態を確認している分だけ、机上査定よりも買い手が納得してくれそうな査定額を割り出しやすいといえるでしょう。

同じ物件でも、提示される査定額は不動産会社によってまちまちです。訪問査定の有無だけでなく、需要も影響します。買い手が多く見込めたり、倉庫を活用するノウハウが豊富だったりする不動産会社であれば、高い査定額が期待できるでしょう。

価格の決定

査定額が提示されたら、いくらで売り出すか自分で決定します。不動産会社からのアドバイスはありますが、最終的に決めるのは自分です。査定額のとおりでも構いませんし、希望の価格があるなら上乗せしても問題はありません。

ただし、実際の取引においては、買い手からそれより安い希望価格を提示される場合があります。もちろん断るのは自由ですが、ほかの買い手が見つからないかもしれません。「この範囲なら売る」と、ある程度は価格に余裕を持たせておくと良いでしょう。

媒介契約

価格が決定したら、不動産会社に売り出し(買い手の募集)を依頼します。依頼する不動産会社はひとつでも複数でも可能ですが、必ず「媒介契約」を結ばなければいけません。媒介契約は、同時に契約できる不動産会社の数や契約期間、義務によって3種類あります。

まずは「専任媒介契約」です。一度に依頼できる不動産会社の数はひとつに制限されています。契約期間は最長で3ヶ月です。さらに販売状況を14日に1回以上報告する義務があり、媒介契約が成立してから7日以内にレインズ(不動産流通機構)へ物件の情報を登録しなければいけません。

レインズに物件の情報を登録すると、全国の不動産会社が見られるようになります。そこから買い手が見つかる可能性もあるわけです。

専任媒介契約をもっと厳しくしたものが「専属専任媒介契約」となります。販売状況を報告する義務が7日に1回以上であり、レインズへの登録も媒介契約が成立してから5日以内に行わなければいけません。

さらに専属専任媒介契約では、売主が自分で買い手を見つけて直接取引するのも禁止されています。その人に売りたければ、不動産会社を仲介しなければいけません。「仲介手数料を払いたくないから、自分で取引する」というのは認められないのです。

「一般媒介契約」は、一度に依頼できる不動産会社の数に制限がなく、必要な分だけ同時に売り出しを依頼できます。契約期間の制限も本来は定められていませんが、専任媒介契約や専属専任媒介契約に倣って、3ヶ月以内とするのが一般的です。販売状況を報告する頻度にも定めがなく、レインズへの登録も義務付けられていません。

3種類の媒介契約は、それぞれにメリットとデメリットがあります。

特定の不動産会社で買い手が見込めそうだったり、熱心に売り出してほしかったりするのであれば専任媒介契約(または専属専任媒介契約)のほうが向いているでしょう。逆に幅広く売り出したいのであれば、一般媒介契約のほうが訴求力はありそうです。

自分の希望や物件の需要を踏まえて、適していると思われる媒介契約を選びましょう。

売り出し

媒介契約を結んだら、いよいよ物件の売り出しです。専任媒介契約(または専属専任媒介契約)であれば定期的に報告があるので、広告などの売り出しに対してどれくらいの反響があったのかチェックしましょう。一般媒介契約でも任せっきりにするのではなく、自分から依頼した業者に積極的に問い合わせたいところです。もっとも、一般媒介の場合は、反響(お客様の問い合わせ)が依頼した業者に分散されるので、反響の分析が難しいといった点が挙げられます。

思ったような反響を得られないときは、売り出し方を変えたり、ときには販売価格を引き下げたりするなどの決断が必要になります。

売買契約

不動産会社が買い手を見つけたら、「買付申込書」を受け取ります。これは買い手の希望が記載された書類です。購入価格や手付金の額、契約日や受渡日などが記載されています。あくまでも希望であり、不満があれば交渉が必要です。合意に至れば、売買契約を結びます。

契約が締結されると、買い手は売主に対して手付金を支払うのが一般的です。販売価格の5~10%が目安となります。

売買契約が成立したら、契約書に記載されている受渡日までに倉庫を引き払わなければいけません。できれば売り出す前に、片付けを済ませてすぐに引き払えるようにしておくと良いでしょう。

代金を受け取って、所有権の移転や抵当権の抹消など登記の手続きを行えば、倉庫を売るのは完了です。

アフターフォロー

売却が完了しても、まだ手続きが残っています。それが確定申告です。不動産を売却して利益が出ると、確定申告をして利益に応じた税金を納めなければいけません。

課税の基準となる「譲渡所得金額」は、販売価格から物件を取得したときにかかった費用と譲渡にかかった費用、特別控除額を引いて算出されます。これに税率を掛け合わせた金額が納める税金です。

税率は物件の保有年数で異なり、譲渡した年の1月1日の時点で5年以下の短期であれば所得税と住民税を合わせて39%、5年超の長期であれば20%となります。2037年までは、所得税分に対して復興特別所得税2.1%が上乗せです(2020年6月現在)。(※個人の場合

こうした税金の手続きを、ひとりで済ませるのは大変かもしれません。そんなとき、不動産会社のフォローがあると安心です。

また、物件を売却した後も、売主は一定期間「瑕疵担保責任」が負います。これは売却後に生じた売主の知らなかった欠陥に対して、修理の責任を負うものです。やはり自分だけで対処するより、不動産会社がサポートしてくれると心強いでしょう。

倉庫を売る前に気をつけておきたいこと

倉庫を速やかに売るなら、価格設定と不動産会社選びが大事です。気をつけたいポイントを知っておきましょう。

売却相場を知っておく

どんなに希望の販売価格があっても、それが不動産会社の査定額とかけ離れていると、買い手が見つかりづらいですし、不動産会社も売り出すのに困ってしまいます。

そうならないように、あらかじめ自分で相場を調べておくのが大事です。似たような物件がいくらで売り出されているか、過去にいくらで売れたかを確認しましょう。不動産会社に問い合わせるだけでなく、インターネット上でも調べられます。

また、固定資産税評価額も参考になるでしょう。各自治体が個別に決めており、固定資産税の基準となる額です。毎年送られてくる納税通知書に記載されています。

相場を知っていれば、不動産会社が提示する査定額にも納得しやすいですし、算出根拠も理解できるでしょう。

信頼できる不動産会社を選ぶ

倉庫を売るときは、居住用の物件と違って、倉庫を売るのを得意とする不動産会社を見つけるのが重要です。こうした不動産会社は、倉庫を必要とする買い手とのつながりが多く、売り方も心得ています。

もうひとつ、不動産会社とは倉庫が売れるまで長い付き合いとなります。その際、真剣に対応してくれないと、いつまで経っても倉庫は売れません。担当者との相性もあります。

最初に声をかけてから査定額が出るまでの間に、こうした対応ぶりや相性は見極められるはずです。迅速に対応してくれたり、疑問や不安を丁寧に解消してくれたりするところであれば、なお良いでしょう。

株式会社タープ不動産情報は、倉庫の売買実績が豊富です。単に売却するだけでなく、保有して活用する方法も提案できます。また、不動産の売却にともなう疑問や不安も、専門家との連携によって速やかな解消が可能です。

倉庫を売ろうとお考えの際は、ぜひご相談ください。

依頼する不動産会社を選ぶときのポイントを4つ紹介

倉庫を売る際は、よほど不動産業界に精通しているか、企業単位の人脈を持っていない限り、個人で買取先を見つけることは難しいでしょう。

そのため、ほとんどの場合は不動産会社を利用して売却することになります。そうすることで買い手が見つかりやすく、売買の手続きなどもスムーズに進めてもらえるのです。

しかし、どこの会社に依頼しても良いというわけではありません。

より良い条件で倉庫を売却するためには、不動産会社選びが重要になりますので、判断するポイントを押さえておく必要があります。

1.不動産会社の得意分野を確認する

不動産会社にはそれぞれに得意分野があり、一般的な建売やマンションなどの分譲業者や中古物件の売買をメインとする買取再販業者、不動産の仲介を得意とする媒介業者などさまざまです。

その中でも倉庫や工場を売却したい場合には、特殊な事業用不動産に強いところを選ぶことで成功につながりやすくなるでしょう。

さらに厳選する際は、不動産会社のホームページなどで、売却や仲介の実績なども確認しておくことが大切です。

情報をしっかりと集めてチェックし、信用できる会社を見つけ出すための時間は惜しまないようにしましょう。

2.免許番号などから信頼性を確認する

不動産事業を行うためには、国土交通大臣などから認可を得た免許が必要です。

この免許には番号が割り振られており、内容を確認することで不動産会社としての信頼性をはかることができます。

仮にこの番号を持たない会社があれば、違法に営業していることになりますので、どのような良い条件であっても信用できません。契約しないようにしてください。

免許は5年に1度更新が必要で、更新回数が多ければそれだけ長く営業している会社と判断でき、実績も豊富である可能性が高いでしょう。

確認方法ですが、免許には「()◯号」と記載されていて、カッコ内には更新回数の数字が入ります。

認可を受けたときが最初の1になりますので、開業4年までは(1)となり、6年目には(2)となるのです。しかしこの数字が小さいからといって、業務歴が短いとは限りません。

例えば、途中から複数の県で不動産業を行う場合には、都道府県知事免許から国土交通大臣免許を得る必要があり、年数に関わらず変更後は(1)に戻ります。

また、反対に都道府県知事免許に戻す場合や、個人事業者が法人化する際も更新歴がリセットされる性質があるのです。

よって、免許番号はあくまで選ぶ基準のひとつとして確認し、その他のポイントも合わせながら判断するようにしましょう。

3.不動産売却の戦略がしっかりしているか確認する

免許番号だけではなく、実際に会社に行くことで信用できるか判断できる部分も多くあります。

特に不動産売却のためには、さまざまな戦略が必要ですので、具体的なプランの内容やスケジュールの提示など、売主が納得できる戦略を行う会社なら信頼性は高いでしょう。

一方的な会社側の戦略だけでなく、売主の要望を取り入れてくれるかどうかも見極めのポイントです。

「売却戦略が曖昧で説明が分かりにくい」「売主の要望より自社のプランを押し付けてくる」といった不動産会社は避けた方が良いといえます。

4.トラブルに発展しそうな業者は避ける

査定価格が極端な不動産会社は、競合に勝って顧客を得るために実際の価値以上の額を提示しているケースがあります。

相場からかけ離れている場合は、実際に提示した価格で売却されるとは限らないため、最終的には値下げによるトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

また、過去に行政処分を受けている不動産会社は利用しない方が無難です。

行政処分については、国土交通省の「ネガティブ情報等検索システム」で調べることができますので、あらかじめチェックしておきましょう。

まとめ

倉庫を売るときは、不動産会社選びから査定、媒介契約、売り出し、売買契約、代金の受け取り、引き渡しに至るまで数多くのステップがあります。できるだけ希望に近く、少ない負担で売るなら、倉庫の売却に詳しく、信頼できる不動産会社に依頼しましょう。