不動産投資のデッドクロスとは?陥る原因と回避するための対策

「不動産投資を行うならデッドクロスに気を付けなければならない」と耳にしたことがある人もいるかもしれません。不動産投資でのデッドクロスとはどのような意味なのでしょうか。この記事では、不動産投資でデッドクロスに気を付けるべき理由と原因、対策について解説します。

不動産投資のデッドクロスとは

デッドクロスとは、建物などの減価償却費と不動産投資のローン元本返済額が交差し、ローン元本の返済額が減価償却を上回る状態を表します。

不動産投資では、このデッドクロスに気を付ける必要があるといわれますがなぜでしょうか。ローンの返済と減価償却費のそれぞれについて整理してみましょう。

まず、ローン返済額についてですが、ローンの利息部分は費用計上できます。しかし、元本については、会計上、長期借入金(負債)として処理するため費用処理できません。つまり、実際はお金が出ていっているものの、会計上は費用として扱われないことになります。

一方、減価償却費は、経年劣化のある建物や建物附属設備に適用されるものです。建物を購入した場合、支出額を一度に費用とするのではなく、耐用期間に応じて、20年など複数年に渡って取得価額を費用に計上していきます。減価償却費は実際の出費をともなわない費用です。

このように、デッドクロスは、実際に出ていったお金と、会計上や税法上の費用になるお金に違いがあることで起こります。

デッドクロスが起こると、減価償却を超過したローン元本の返済額が実質的に費用にならなくなってしまうため、超過した分、黒字が拡大し、所得税を多く負担しなければなりません。問題は、会計上は黒字でも、デッドクロスによって所得税が増加することで資金繰りが悪化してしまうことです。

(デッドクロスの起きていない状態)
減価償却費 120万円 > ローン元本返済額 100万円

(デッドクロスが起きている状態)
減価償却費 50万円 < ローン元本返済額 100万円
この場合、費用にできるのは減価償却費の50万円のみです。減価償却費の減少分だけ所得税の負担が重くなるので、ローン元本返済額は変わらなくても、所得税額が増加し、支出額が増えてしまいます。

デッドクロスが起きてしまう原因

デッドクロスは、ローン元本返済額が減価償却費を超えることと説明しました。なぜローン元本返済額が超過するのでしょうか。デッドクロスの原因を見ていきましょう。

不動産の償却が進み経費計上できなくなる

デッドクロスが起こる原因のひとつは、減価償却費の減少です。建物や構築物など、経年劣化のある固定資産には、構造に応じた耐用年数があります。この耐用年数に合わせ減価償却費として費用計上していくのが一般的です。

たとえば、木造住宅であれば耐用年数は22年となります。この場合ですと、22年を超えると減価償却が終わってしまいますので、対象の建物分の減価償却費の計上が以降はできません。

なお、平成28年4月1日以降取得の建物や附属設備、構築物などは定額法と決められていますが、以前に取得したものの中には定率方が認められるものもあります。

定額法が毎期一定の減価償却を行うのに対して、定率法ははじめの方の減価償却が大きくなり、後半になるにつれて減価償却費が小さくなる方法です。減価償却がなくなること、定率法の採用によって後半にかけて減価償却費が減少していくことが、デッドクロスの原因のひとつです。

借入金返済の中で経費にできる金利返済の割合が減る

毎月の返済額が一定になる元利均等方式だと、返済当初は利息の割合が多いものの、返済期間が経過するにつれ利息の割合が減り、返済する元金の割合が増えます。

借入金の返済のうち費用にできるのは利息部分のみと説明しましたが、つまりは返済期間の経過にともない、費用にできる利息が減少していくということです。このように、利息返済の減少と元金返済の増加もデッドクロスの原因に挙げられます。

築年数の経過で家賃収入の減少

直接的に減価償却の減少、ローン元金返済額の増加に関わるわけではありませんが、家賃収入の減少もデッドクロスで問題となるキャッシュフローの悪化を招くことがあります。

賃貸物件は経年に応じて資産価値が下がり、家賃収入も下がるのが通常です。家賃収入が下がるということは、入ってくる現金が減るということです。収入がローン返済額を下回ると、デッドクロスのようにキャッシュフローの悪化を招きます。

デッドクロスを未然に防ぐための対策

不動産投資を行っていれば、デッドクロスはいつか起こりうることです。次に、デッドクロスによるキャッシュフローの悪化を防ぐ対策を紹介します。

シミュレーションを行う

デッドクロスの時期は、将来にわたる減価償却費、ローン元本返済額が分かれば割り出せます。まずは、シミュレーションを行い、デッドクロスとなりそうな時期を把握しておきましょう。

利回りの高い物件を購入

デッドクロスを回避できなくても、デッドクロスによる資金繰りの悪化を防ぐことができれば不動産投資は安定します。そのためには、デッドクロスによる負担をまかなえるだけの資金が必要です。

減価償却終了後も税額分をカバーできるだけの家賃収入があれば、つまり利回りの高い物件であればデッドクロスによるマイナスを回避できます。

タープ不動産情報では、不動産にまつわる幅広い相談を受け付けています。もちろん、デッドクロスを回避する方法やデッドクロスによる資金繰り悪化をカバーする相談も可能です。

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5年経過後に売却

長期譲渡所得になるタイミングを狙って、投資物件を売却するのも方法のひとつです。5年後、売却益も損も出ない価格で売却できれば、5年間の運用益がリターンとなります。

売却によって売却益が発生した場合でも、長期譲渡所得に該当すれば、短期譲渡所得なら税率39%(国税30%、地方税9%)のところ、税率20%(国税15%、地方税5%)に抑えられるのがポイントです。

ただし、長期譲渡所得になるタイミングは、物件の取得から5年経過後でなく、譲渡する年の1月1日時点で所有期間5年を超えている必要がありますので注意しましょう。

購入時土地代金分は自己資金を投入

デッドクロスによる資金繰りの悪化は、借入金の元本返済部分が減価償却費を超えることで起こると説明しました。それならば、元本返済部分が大きくならなければ良いということです。

つまり、借入金の額を少なくすること、減価償却期間内に返済できる範囲で借りれば、デッドクロスは起こらないことになります。たとえば、不動産投資開始時に、土地分は自己資金でカバーし、建物部分を減価償却期間内のローンにすればデッドクロスの回避は可能です。

納税資金を貯蓄

デッドクロスにより黒字が大きくなることに備え、所得税分がカバーできるよう資金を貯めておきます。デッドクロスを直接回避することはできませんが、デッドクロスによる資金繰りの悪化と不動産投資存続の危機といった、万が一の事態に備えることはできるでしょう。

まとめ

建物などの減価償却費がローン元本返済額を下回ることで起こるデッドクロスは、ローンを活用して不動産投資を行っているならいつか起こる可能性の高いことといえます。

デッドクロスによる問題は、会計上費用にできない支払額が増えることで、資金繰りが悪化する可能性が高まることです。問題を解決するには、デッドクロスを回避できるような対策を取っておく、あるいはデッドクロスになってもカバーできるようにしておくことが重要なポイントになるでしょう。

タープ不動産情報では、デッドクロスの問題を含めて、不動産に関するさまざまな相談を受けつけています。疑問や不安があれば、まずはお問い合わせください。