40年ぶり!相続法大改正のポイント②
前回に引き続き、相続法改正のポイントをお伝えします。
今回は相続法改正のポイントを具体的に見ていきましょう。
改正のポイント
主な改正のポイントは、次の6つです。
1、妻(夫)がそのまま自宅に住めるように
2、婚姻期間20年以上の夫婦の自宅の贈与が、遺産分割の対象外に
3、遺言書の一部がパソコンで作れるように
4、遺言書を法務局に預けることが可能に
5、長男の妻も財産を取得することができるように
6、故人の預貯金を引き出すことが可能に
1、 妻(夫)がそのまま自宅に住めるように
夫または妻が亡くなったときに、残された配偶者(妻または夫)が生活できなくなってしまうことがないようにするために、配偶者がまずは生活の基盤である自宅に優先的に住むことができるようになりました。この配偶者が自宅に住み続けることができる権利を「配偶者居住権」といいます。
日本人の典型的な相続は、自宅(持ち家)と少しの預貯金であることから、実は相続が発生した場合に問題が起きるケースが少なくありませんでした。
例えば夫が亡くなり、相続するのが妻と子どもという場合、法律上の妻の取り分は1/2、子どもの取り分も1/2、つまり半分ずつ分けることになります。
ところが、夫が残した財産が2000万円の自宅と3000万円の預貯金だった場合、妻は住む場所として自宅を相続したいのに、取り分が1/2だと預貯金は500万円しか相続することができず、生活費が不足するという問題が生じていたのです。
そこで、自宅の相続を、自宅を所有する権利と自宅を使う権利とに分けて、自宅を使う権利、つまり自宅に住む権利を妻(配偶者)に優先的に認めることにしました(配偶者居住権の創設)。
自宅の2000万円の価値を、1000万円の所有権と1000万円の配偶者居住権とに分けて、子どもが所有権の1000万円を、妻が居住権の1000万円をそれぞれ相続することにより、妻はこれまでよりも1000万円多い1500万円の預貯金を相続することができ、安心して生活できるようになるというわけです。この制度は2020年4月1日からスタートします。
2、婚姻期間20年以上の夫婦の自宅の贈与が、遺産分割の対象外に
夫(妻)が妻(夫)に財産をあげると「贈与税」という税金がかかりますが、結婚して20年以上経つ夫婦が相手に自宅をあげた場合には、2000万円までは贈与税がかからないという特例があります。
自宅はほとんどの場合、夫婦で築いた財産ですから、夫婦間で贈与をしたときに税金をかけるのはかわいそうだということで認められている制度です。ところが、この制度を使って、例えば夫が自宅を妻に贈与した場合でも、夫が亡くなったときにはその贈与はなかったものと考えて、相続の取り分を決めなければならないことになっていました。
そのため、せっかく妻に自宅を贈与しても妻の取り分が増えるわけではなく、わざわざ生きている間に贈与した意味がなくなっていたのです。
そこで、税金の特例に合わせる形で2019年7月1日から、婚姻期間が20 年以上である夫婦間で自宅の贈与をした場合には、相続の取り分を決める際に、贈与した自宅はその対象としなくてよいことになりました。
(事例)
夫の財産が2000万円の自宅と3000万円の預貯金で、合計5000万円だった場合を考えてみましょう。
これまでは、2000万円の自宅を夫から妻に生前に贈与していても、夫が亡くなったときは夫の財産を5000万円と考えて、妻と子どもで財産を分けることになるため、妻は2000万円の自宅のほかに500万円の預貯金しか受け取ることができませんでした。
今後は、2000万円の自宅はすでに贈与されていることから、取り分の計算の対象にはせず、3000万円の預貯金を子どもと1/2ずつ分けることになります。そのため、妻は2000万円の自宅と1500万円の預貯金を相続することができるようになり、妻の取り分が多くなるのです。
3、遺言書の一部がパソコンで作れるように
自分で書く遺言のことを「自筆証書遺言」と言います。これまでは、そのすべてを自分で手書きしなければなりませんでした。「全財産を○○に相続する」というような簡単な遺言ならいいのですが、財産を複数の人間に相続させるという遺言を作るためには、その一つひとつを遺言に書かなければならなかったのです。
預金であれば銀行名、支店名、預金の種類、口座番号を、不動産であれば登記簿謄本に記載されている情報を、そのとおりに書かなければならないので、すべてを手書きするのはとても大変な作業でした。
そこで、手書きをする負担が大きい「財産目録」部分については、パソコンで作ってよいことになりました(2019年1月13日より施行されています)。
財産目録については必ずしも文書形式でなくてもよくなり、不動産であれば全部事項証明書(登記簿謄本)、預貯金であれば通帳の表紙のコピー(金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号、口座名義がわかる部分)などでも認められるようになりました。これらによって、一度作成した遺言書を書き直すなどの手間も減り、自筆証書遺言はかなり作成しやすくなっています。
4、遺言書を法務局に預けることが可能に
テレビドラマでもよくあるように、自分で作った遺言書が見つからないとか、遺言書を本人が書いたかどうかが疑わしい、といった問題がよく生じていました。遺言書を書いたと聞いていたのに見つからなかったり、あるいは聞いていた内容と違っていたりすると、相続人の間で不信感が生じることになり、もめる原因にもなりかねません。
そこで、2020年7月10日から自筆証書遺言を、法務局で保管する仕組みができました。つまり、国が保管してくれるというわけです。
遺言書を作成した本人が法務局に預けることになるため、内容について疑いが生じることはありませんし、保管場所が法務局とわかっていれば、遺言書が見つからないということもありません。
さらに、これまで自筆証書遺言は相続人が家庭裁判所に持っていって「検認」という手続きをしなければならず、手間も時間もかかっていたのですが、法務局に預けてある場合には検認の手続きもいらなくなります。
この制度によって、遺言書を作ることのメリットがより大きくなり、遺言書を作成する人が増えることが考えられます。
5、長男の妻も財産を取得することができるように
例えば、長男の妻が長男の親の介護をしていた場合、長男が長男の親よりも先に亡くなってしまうと、長男の妻がどんなに長男の親の介護をしていても相続人にはなれないため、相続財産を受け取ることはできませんでした。
しかしながら、法律上の相続人以外の親族が無償で亡くなった人の介護を行ったなど、亡くなった人の財産を増やした、あるいは減らさなかったと認められる場合は、財産をまったく受け取ることができないと不公平になるため、2019年7月1日から、そのような親族は相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。
これにより、相続人ではない親族(子の配偶者など)で被相続人の介護をした人は、相続人に対して金銭の請求をすることによって、財産を受け取ることができるようになったというわけです。
6、故人の預貯金を引き出すことが可能に
亡くなった人の預貯金は、遺産分割協議が終わるか、あるいは相続人全員の同意がないと引き出すことができません。そのため、相続が発生した後に、葬儀費用や医療費など、緊急で必要な資金を引き出せないことがあるという問題がありました。
そこで、今回の法改正によって2019年7月1日以降は、一定額については相続人が単独で引き出すことができるようになりました。預貯金を引き出すには、①金融機関に直接依頼する方法と、②家庭裁判所に申し立てをする方法の2つがあります。
①の「金融機関に直接依頼する方法」には、金融機関ごとに、預貯金残高×1/3×相続人の法定相続割合という上限額があり、かつ1つの金融機関から引き出せる上限額は150万円となっています。
②の「家庭裁判所に申し立てをする方法」は、上限額は法定相続分となるため、①よりも上限額は大きくなりますが、裁判所への申し立て手続きが煩雑なことや引き出しが必要な理由が必要になるというデメリットもあります。そのため、引き出したい額やその使途によって①と②を使い分ける必要があります。
次回以降も皆様に有益な情報を提供してまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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