貸工場倉庫投資の強みは「用途変更」の柔軟性~用途変更の手続きを紹介~
貸工場倉庫の不動産経営における強みは万能に用途を変更することができる柔軟性です。
オフィスやマンションなどは、ライバル物件の設備や日影、築年数などに影響され空室率が変動することが度々です。不動産経営をする際にライバルとの差別化を図り入居率をあげなければならないのは直接コストに跳ね返るので、できれば避けていきたいものです。
貸工場倉庫の不動産経営はこれらのコストは原則テナント負担で行います。その背景にあるのが、「貸工場倉庫は”箱”で貸し、元の”箱”に戻して返す」です。マンションのように「住む」という一つの目的に対して設備投資をするのと違い、貸工場倉庫は箱という空間があらゆる利用の可能性を広げます。つまり、貸工場倉庫のオーナーは様々な用途に変更することを承認をするだけで、「万能の箱」として生まれ変わるのです。その万能の箱はライバル物件の存在はなく、同じ貸工場倉庫が10棟並んでいた場合も、業種が10業種となることで、地域活性化につながったり、集客にプラスになることから、賃料相場が上がるなんて言うことも不可能ではないのです。
用途変更によるメリット
貸工場倉庫の用途を変更するメリットは沢山ありますが、主なものとして以下があります。
・貸工場、倉庫の用途変更はテナントが解約になった場合でも、あらゆる業種に窓口を広げることにより、空室リスクを小さくする。
・新たなテナントを探す際に、伸びてい業種を選択することも可能。
・用途変更に伴う、設備投資や役所関係への申請費用はテナント持ちとなるため、オーナーは低コストで運営できる。
・多くの設備投資をしたテナントは長期契約の可能性が高く、長期安定収入の可能性が高まる。
どの様な用途変更があるのか?
用途を変更することで、貸工場倉庫は空室リスクや長期安定へのメリットを紹介しましたが、具体的にどのような用途変更があるのかの事例を紹介します。
以下の業種は貸工場倉庫から実際に用途を変更した業種です。もちろん工場から違う業種の工場というパターンや倉庫から倉庫という事も多くありますが、飲食、販売店、スポーツ施設など様々な業種へ用途を変更する例は多くあります。
-カフェ
-自動車販売店
-駐車場、カフェ付きオフィス
-クリーニング店
-ドラッグストア
-サーフショップ
-パン屋さん
-花屋さん
ー塾や診療所
-フットサルコート
-ボルダリング
-スケートボード練習場
-ショールーム
-ラーメン店
-パチンコ店
-介護施設
-幼稚園、保育園
用途を変更する際の注意点
もともと倉庫や工場だった場所を、新たに店舗やスポーツ施設として活用する場合はそのまま用途を変更することも可能ですが、多くの場合は役所等への申請が必要になります。
この申請をしないまま用途を変更して使用した場合は法律違反になりますので注意が必要になります。
用途変更の申請とは、新築のときに申請した建物用途を違う用途に変更すための申請です。
用途変更の申請をしなければならない理由は、その建物が使用される用途によって、安全基準などが違うからです。例えば、倉庫だった建物から不特定多数の来客があるような店舗に用途が変更になった際は、火災などから来客を守らなければならなくなります。建物を倉庫として使用する基準と、店舗として使用する基準は当然違うものになってきます。
どの様な時に用途変更申請が必要になるか?
用途変更の申請が必要とされるのは、原則として以下の2つの時です。
(1)これまでの建物の使いみちを「特殊建築物」へと変更する場合
特殊建築物の指定は建築基準法で定められていて、事務所や住宅以外が指定されています。
特殊建築物として指定されている用途から特殊建築物へ使用を変える場合で、用途が近い場合には、手続きを要しないケースもあります。
たとえば、もともと劇場として利用していた建物を、新たに映画館として利用する場合は、これに当たります。(建築基準法施行令第137条17)
(2)用途を変える面積が200m²を超える場合
用途を変える面積が200m²以下の時は、手続きが必要ない場合もあります。
このように、ある建物の使いみちを変える際に用途変更が必要かどうかは、状況によって異なるということです。
貸工場倉庫を別の用途で使用する時には、状況によっては手続きが必要ない場合がありますが、建物の構造や消防設備が飲食店としての安全基準を満たす必要はあります。
最近では、用途変更申請をしないで使用しているテナントも見かけますが、用途変更申請が必要とされるにもかかわらず、申請をしないで使用した場合には、労働基準法違反、建築基準法違反、消防法違反などに抵触し罰金や営業停止という行政処分に発展するケースもありますので、原則として手続きが必要ないと思われる場合であっても、念のため建築士に調査を依頼することをおすすめします。
用途変更の流れ
(1)建築確認申請の要・不要を確認する
(2)既存不適格建築物の用途変更の準用チェック
既存不適格建築物とは、建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことを言います。建築基準法は原則として、着工時の法律に適合することを要求しているため、着工後に法令の改正など、新たな規制ができた際に生じるものになります。そのまま使用していても直ちに違法というわけではありませんが、増築や建替え、用途変更等を行う際には、法令に適合するよう一定範囲の是正義務が生じます。
手続きにかかる費用は?
数十万円~数百万円と、用途変更内容・依頼先によって金額は様々です。詳しくは、関係官庁や専門家へお問い合わせください。
手続きに必要なものは?
用途変更するときは「検査済証」が必要
検査済証が無い場合は「建築確認書」が必要
その他、設計図書等、詳しくは専門家である建築士へお問い合わせください。
「検査済証」とは、その建物と敷地が建築基準関連規定に適合していることを証明するものです。「検査済証」は、建物の完成時に交付されます。
ただし、中にはさまざまな理由から「検査済証」が存在しない物件もありますから、その際は、用途変更前に建物の調査を依頼する必要が出てきます。
「検査済証」が存在しない場合は、平成26年7月に国土交通省で定められたガイドラインに基づき、一級建築士あるいは建築基準適合判定資格者に「建築確認書」に基づいた調査を依頼することで、検査済証と同等の位置づけとなる報告書を発行できることになりました。
「建築確認書」は、建築しようとする建造物が建築基準に適合しているかどうかの審査を受け、その際に適合していたことを証明するものです。したがって、建築確認書は建築着工前に交付されます。
一級建築士または建築基準適合判定資格者が、建物の状態が建築確認書の通りであるかを確認します。仮に「建築確認書」がない場合は、新たに復元図書を作成します。
また、単に「検査済証」や「建築確認書」を紛失したケースでは、「台帳記載事項証明」という書類で代用することが可能です。
手続きにかかる期間は?
一概に期間を回答することは難しいのが現状です。
既存建物の図面・書類等が揃っているか
建物の現状はどうなっているか、法律に適合しているか
確認申請機関はどのような書類・図面を要求するか
どの程度の改修が必要になるか
などによって、掛かる手間や時間が大幅に違ってくるためです。この他にも、建築基準法や消防法、その他法令が複雑に絡みます。手続きの必要の有無や安全性を確かめるためにも、前もって、関係官庁や専門家へ確認しましょう。
まとめ
マンションやオフィスビルなどのように、使用用途が限定された建物はライバル物件や相場の影響を受けやすく、ライバル物件との差別化がコストとして負担になる一方、貸工場倉庫の様な箱はライバル物件の影響を受けづらく、様々な業種に用途変更することで空室リスクを減らすだけでなく、設備費用などに関してもテナント負担となりますのでオーナーには低コストを実現します。テナントが充実した設備をすればするほど解約リスクが小さくなるので、長期的に賃貸で借りてもらえる可能性が高くなります。貸工場倉庫の不動産経営は低コストで長く安定した収益を見込める不動産経営なのです。
用途変更申請などの手続きは原則としてテナント負担にて実施されますが、用途変更申請は罰則規定もあることから、専門の建築士に相談しながら違法行為は避け、安定した不動産経営を実現させることをおすすめいたします。