工場を相続したい!気になる税金・手続きの流れ・注意点を解説

すでに事業をたたんでいるものの、使用していない工場が資産として残っており、相続を考えている人もいるでしょう。工場を相続する場合、どのような準備が必要になるのでしょうか。工場相続にかかる税金、手続きの流れ、そして注意点など、相続の概要を解説します。

工場を相続する際にかかる税金について知ろう

工場の相続では、主に「登録免許税」、「相続税」といった税金がかかります。

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権を登記する場合に発生する税金です。不動産に関する登記には、新築物件の所有権保存登記、所有者が変わる所有権移転登記、不動産を担保にする抵当権設定登記があります。

このうち、相続で必要となるのは、「所有権移転登記」です。相続による土地の所有権移転登記、建物の所有権移転登記、いずれも不動産価格の0.4%が登録免許税として課されます。

ここでの不動産価格とは、実際の取引価格ではなく、自治体で管理されている固定資産課税台帳にある価格のこと。多少の変動はありますが、地価公示価格の7割程度が固定資産課税台帳の価格の目安とされます。

登録免許税に関しては住宅用の家屋については軽減税率が適用されますが、工場は住宅用ではないため、軽減税率は適用されません。

相続税

工場の相続では、相続税がかかることがあります。相続税とは、一定以上の相続があったときに課される税金のことです。

工場を含む被相続人(亡くなった人)の所有するすべての遺産と相続時精算課税制度を適用した贈与財産の合計から、葬式費用や債務、非課税遺産を控除して、遺産額を出します。さらに遺産額に相続開始3年前の贈与財産を加算し、基礎控除を差し引いたものに相続税が課せられるしくみです。

(相続税のイメージ)
遺産総額+相続時精算課税制度適用の贈与財産-(非課税財産+債務など)=遺産額

遺産額+相続開始前3年以内の贈与財産=正味遺産額

正味遺産額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)=相続税の対象となる遺産

相続税の対象となる遺産×法定相続分×相続税の税率(10~55%)-相続税控除額=相続税額

※実際の相続税の計算は、取得した遺産の額に応じて行われます。
※相続税の計算は、各相続人が法定相続分どおりに相続したものとして相続税総額を計算します。その後、実際に取得した遺産の割合に応じて按分されます。
※配偶者は相続した財産が1億6,000万円または法定相続分のどちらか高い方の金額の範囲内であれば、相続税が免除されます。

相続税には基礎控除額があり、基礎控除額の範囲内なら相続税は発生しません。たとえば、法定相続人(法律上の相続人の数)が5人の場合、基礎控除は6,000万円ですので、正味遺産額が5,000万円なら相続税がかからないことになります。

工場の相続に必要な手続きの流れを確認しよう

次に、工場の相続に必要な手続きの流れを確認していきましょう。

相続人・相続財産を確認する

まず、相続人や相続財産を確定することです。相続人の確認は、被相続人の戸籍謄本を取り寄せ誰が相続の権利を有しているか、遺言書に相続人の記載がないか確認して確定します。

相続人を確定すると同時に、工場以外の相続財産について、プラスの財産、マイナスの財産、いずれの財産も見落としが無いように調べるようにしましょう。すべての財産を洗い出し、相続財産も確定します。

名義を変更する

相続人と相続財産の確定後、遺産分割がまとまったら、工場の土地と建物の所有者を変更します。このとき必要なのが、所有権移転登記です。相続による所有権移転登記には、以下のような書類が必要となります。

(相続による登記に必要な書類)
・被相続人のすべての戸籍謄本
・被相続人の除票
・相続人の戸籍謄本、住民票
・固定資産評価証明書
・登記済証(権利書)

遺言による相続の場合は遺言書と検認調書、遺産分割があれば遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書なども準備しておかなければなりません。

司法書士などに名義変更を頼む場合は、委任状、登記原因証明情報(売買契約証書/贈与契約証書/離婚日が記載された戸籍謄本など)、複数相続人がいれば遺産分割協議書も必要です。

相続税を申告する

次に、相続税を申告します。相続税の項でも説明したように、相続する工場を含めた遺産総額を出したあと、基礎控除額を差し引き、相続税の有無を確認しましょう。前述のように、課税の対象となる遺産が基礎控除を超えない場合は、相続税の申告は必要ありません。

相続税の納付が必要な場合は、相続税申告書を作成します。相続税申告書を作成したら、必要書類を添付して管轄の税務署へ提出。申告と同時に納付も行ないます。

なお、ここで紹介した相続税の計算や申告書の作成は相続人自身が行うこともできますが、複雑な計算が必要で、添付書類も必要なため、申告漏れのリスクが高いです。

さらに、相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日から10ヶ月以内に申告・納付しなければならず、申告や納付が遅れれば、延滞税などが発生することもあります。

相続税がかかるかもしれないと予想できる場合は、相続税申告の専門家である税理士に、あらかじめ相続財産の計算と申告を依頼したほうが良いでしょう。

工場を相続する際に気を付けておきたいポイント

次に、工場を相続する際に気を付けておくべきふたつのポイントを解説します。

費用をあらかじめ計算しておく

記事のはじめの方でも触れましたが、相続するには費用がかかります。工場を相続する場合は、あらかじめ発生すると予想される費用を計算しておきましょう。

(相続にかかる費用)
・土地と建物に対してかかる登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)
・相続する財産のうち課税対象となる額にかかる相続税額
※相続税の計算のイメージは「相続税」の部分で紹介しています。
相続登記をする場合は、5,000円~2万円ほどの書類費用

なお、上記の金額は自身で申告を行ったと想定した場合の金額です。登記を司法書士に依頼する場合は司法書士に支払う費用、相続税の申告を税理士に依頼する場合は税理士に支払う費用がかかります。

専門家に手続きを依頼するとき、特に高額な費用がかかるのが、税理士に相続税の申告を依頼する場合です。実際の報酬は税理士事務所で異なりますが、相続財産の総額5,000万円以下で25~50万円が相場、相続財産の額などで支払うべき費用は上がっていきます。

工場を相続する際は、相続のための費用の用意もしておきましょう。

複数人での相続の際は分割方法に注意する

工場の相続は、状態次第ではスムーズにいかないこともあります。分割方法によっては相続人同士でトラブルになることもありますので、慎重に分割方法を選択する必要があるでしょう。不動産の分割には、以下のようなケースが想定されます。

■現物分割
現物分割は、不動産をそのままの形で相続する分割方法です。相続人それぞれが現物で相続することになりますので手続きが楽ですが、遺産が不動産に偏っていると不動産によって評価額が異なるため、不公平な分割となりトラブルになることもあります。

■代償分割
代償分割は、不動産をひとりの相続人が相続する代わりに、ほかの相続人が平等に財産を受け取れるよう、不動産を相続した人が相続に見合う額をほかの相続人に支払う分割方法です。

相続する財産は異なるものの、結果的にすべての相続人が納得しやすい形で分割が進むため、分割後のトラブルが少なく済みます。しかし、代償金の支払いは不動産を相続した相続人自身の財産から支払われることになりますので、相続人に支払い能力がないと代償分割は選択できません。

■換価分割
換価分割は、相続する不動産を一括で売却し、お金に変えて、売却額を相続人の間で分割する方法です。換価のタイミングによっては相続税の節税、納税資金のねん出が可能で、うまく交渉が進めばメリットも多い方法になります。

ただし換価分割によって工場が所有財産として残らないこと、すぐに売却できない可能性があることに注意が必要です。

このように工場の相続は、さまざまなことを考慮して行う必要があります。相続前に工場売却をお考えのかた、相続後の工場をどうにか有効活用できないかお考えのかたは、まず株式会社タープ不動産情報へご相談ください。

不動産業界最大級の工場・倉庫を専門にしたタープ不動産情報なら、お客様に合ったベストな工場の活用を提案できます。アフターフォロー体制も整っていますので、安心して任せられるのもタープ不動産情報の特長です。

まとめ

工場を相続するとなった場合、相続にかかる費用や納税資金の準備、手続きの準備、分割の方法についての話し合いなど、さまざまなことを行わなくてはなりません。相続するだけでなく、相続前に工場を売却する方法などもありますので、さまざまな視点で工場をどうするか考えることが大切です。

相続には節税対策、納税資金対策、分割対策があり、所有者が法人か個人かによっても大きく差異がでます。
対策は所有者が元気なうちに準備をすることが望ましいので、タープ不動産情報へご一報ください。