工場が寿命を迎えたら、どのように再活用すれば良い?
工場は長年使っていると建物が劣化します。修繕費用がかさむなど、維持・運営が難しくなるでしょう。工場のオーナーにとって、寿命を迎えた古い工場の活用方法は大きな悩みです。この記事では、工場の寿命の目安や活用方法、注意点について紹介します。
工場の法定耐用年数と実際の寿命
まずは、工場の寿命がどれくらいなのか確認しましょう。
法定耐用年数は最長38年
工場をはじめとする建物の寿命を決める上で目安となるのが「法定耐用年数」です。工場の場合、構造の違いによって法定耐用年数が異なります。
例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄筋コンクリート造であれば最長で38年です。建物に影響を与える素材を扱ったり、保管したりすると、それより短くなります。
他にも、れんが造や石造、ブロック造は最長34年、金属造は鉄骨の厚さによって最長19~34年、木造は最長15年です。
ただし、法定耐用年数は減価償却できる年数であり、実際の寿命ではありません。減価償却とは、資産の購入費用から毎年一定額を経費として処理できる勘定科目のことです。減価償却の間は、所得税(法人税)の負担を軽減できるというメリットがあります。
法定耐用年数は、平均的な寿命で決められていますが、それ以上に長持ちしている工場も少なくありません。
工場の寿命はメンテナンスで延ばせる
一般的な住宅と同じく、工場も定期的なメンテナンスによって寿命を延ばすことが可能です。
例えば、屋根や外壁を塗装したり、別の建材で覆ったりするなどです。内装も塗装やクロスの張り替えによって快適になります。
また、照明や配線、配管といった設備についても、入れ替えによって一新され、効率が上がるでしょう。構造部分についても、適宜補強すれば劣化の進行を止められます。
目安としては、外壁や屋根、内装が10~15年、水回りが10年、設備の入れ替えが15~20年ごとです。構造部分も同じタイミングで検査を行うほうが良いでしょう。工場の使い方や扱う素材によっては、もっと早期のメンテナンスが必要かもしれません。
取り壊したり建て替えたりする目安は?
どんなにメンテナンスをしても、いつかは限界が来ます。そうなると、取り壊すか建て替えるか検討しなければいけません。
目安としては、減価償却が終わり、メンテナンスに高額の費用がかかるようになったときです。このまま維持しても、出費が多くなるだけですし、減価償却を利用した税金控除もできないでしょう。
また、古い工場は、現行の建築基準法を満たしていないところもあるため、耐久性は不安が残ります。耐震性は古い工場ほど乏しいため、大きな地震が発生すると、倒壊の危険もあります。
そんなときは、取り壊したり建て替えたりするのはもちろん、再活用についても検討したいところです。なぜなら、取り壊したり建て替えたりするのは多額な費用が発生することがあります。再活用であれば、少ない負担で収入を得られるからです。
寿命を迎えた工場を再活用する3つの方法
では、寿命を迎えた工場は、どのように再活用すれば良いのでしょうか。
売却する
工場を売却すると、一度にまとまったお金が入るのがメリットです。維持管理の手間や費用、毎年の固定資産税や都市計画税からも解放されます。その代わり、売却後は従来のような収入を得る手段がありません。
また、古い工場が残ったままでは買い手が見つからない恐れがあります。その場合は、解体しなければならず、そのための費用も必要です。
売却による収入から費用を差し引くと、期待するほどの利益にならないかもしれません。
業態転換する
工場を残したまま業態転換して、他の用途で使う方法もあります。例えば、カフェやショップ、ホテル、住居、スポーツ施設などです。
工場は間仕切りや柱が少なく、天井が高くて広さもあるため、一般的な店舗にはない独特の空間を作れるでしょう。
ただし、自ら経営するとなれば、集客して利益を上げなければいけません。そのためには、事前に需要があるのかリサーチする必要があります。競合他店の存在も気になるところです。
また、業態転換するには既存の設備を撤去したり、内装や外装を目的に応じて改装したりしなければいけません。工場から不特定多数の客が利用する店舗にするのは、改装も大がかりになり、多額の費用が発生します。
これらの費用を回収するには、長い時間を要することが予想されます。そのため、経営が軌道に乗るまで大きな負担になるでしょう。
他にも、立地によっては用途地域の制限によって、転換できない業態があります。特に住居地域や工業専用地域にある工場は要注意です。事前に都市計画図を閲覧したり、都市計画関連の部署で確認したりするようにしましょう。
誰かに貸す
工場ごと誰かに貸したり、区分けしてテナントに貸したりする方法もあります。自分で経営するのと違って、改装費用は借主側が負担します。既存の設備を撤去したり、最小限使えるように修繕したりする程度で貸し出せます。
オーナーは賃料という収入を得られます。長期の契約が多いので、安定した利益になるでしょう。
工場を貸すときの注意点
誰かに貸すのは、他の方法と比べて負担が少なく、メリットも多いですが、注意点もあります。どのように対処すれば良いのでしょうか。
契約書に必ず明記する
貸すときに借り手と取り交わす賃貸借契約書に不備があると、トラブルの原因になります。例えば、修繕するときに誰が費用を負担するか、第三者に転貸しても良いかなどです。
そうならないように、決めごとがあるときは口約束で済まさず、契約書に明記しましょう。契約書に記載があれば、法的効力を発揮します。
もちろん、署名(または記名+押印)や日付の記載を忘れてはいけません。後から決めごとを追加するときも、覚書を取り交わせば、同様の法的効力を発揮します。
誰かに貸すときは、近所とのトラブルも気になるものです。その場合も、利用規約としてやって良いこと、ダメなことを明記しておけば、予防策になります。それでもトラブルが発生するようであれば、覚書で追加しましょう。
信頼できる不動産業者に相談する
借主やテナントとのトラブルを防ぐ賃貸借契約書ですが、不動産の知識がないと自力での作成は難しいでしょう。
インターネット上には賃貸借契約書のテンプレートもありますが、自分のケースに最適とは限りません。必要事項を漏れなく盛り込むためには、専門家のアドバイスが参考になります。
また、借り手も探さなくてはなりません。こちらも知識やノウハウがなければ、自力で借り手を探し出すのは困難です。
仮に借り手が見つかったとしても、賃料の回収をはじめ、衛生管理や火災予防、定期点検など、運営にはさまざまな手間や負担が発生してしまうでしょう。
タープ不動産情報は、関東エリアの工場を中心に数多くの賃貸借契約を仲介してきた、豊富な取引実績があります。各種専門家と連携して契約後の管理もお任せいただけますので、トラブルがあったときも安心です。
さらに、工場の活用に関するコンサルティングも行っています。工場の寿命が近づいてお悩みの際は、ぜひタープ不動産情報までご相談ください。
まとめ
工場の寿命は、法的耐用年数によると最長で38年です。耐用年数は定期的な修繕によって延ばせますが、費用が高額になったり、工場として使わなくなったりしたときは、他の活用を検討したほうが良いでしょう。
特に第三者への貸し出しは、少ない負担で賃料を得られる魅力的な活用方法です。専門家へのサポートを依頼すれば借り手も見つけやすく、トラブル防止にもつながるでしょう。