土壌汚染の影響について考える|基礎から対策まで解説

工場のような事業用不動産の売却を考えたとき、土壌汚染はないか不安になる所有者もいると思います。では、問題とされるレベルの土壌汚染とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

この記事では、土壌汚染の基礎と対策について解説します。

土壌汚染の影響の基礎知識

土壌汚染とはどのような状態か、まずは概要から確認していきましょう。

土壌汚染とは

土壌汚染とは、重金属や揮発性有機化合物など、人の活動によって排出された有害物質が、人に影響を与えるレベルまで土に蓄積している状態のことをいいます。

土壌汚染が起こる原因はさまざまです。たとえば、以下のような理由で土壌汚染が起きます。

・有害物質がこぼれたり、漏れたりすることによって土の中に入る
・有害物質が不適切に埋められることによって雨などで土の中に溶け出す
・排気ガスなどで有害物質が拡散し土の表面に落ちる

土壌汚染の特徴

土壌汚染には、以下のような特徴があります。

土の中に長期間とどまる

土の中は、大気や水の中と比べると物質が移動しにくい環境です。

そのため、有害物資は長い間土の中に存在しやすく、簡単には消えません。

目に見えない

土壌汚染の特徴は、たとえ汚染されていたとしても、汚染の事実が目視できないことです。目に見えないために、汚染の事実に気づくのが遅れ、対応が遅れてしまうこともあります。

以上のように、土壌汚染は目に見えず、長期間にわたって影響を与えることから、放置される期間が長くなるほどに深刻度が増していくでしょう。長期間にわたる土壌汚染によって、近隣や近くの河川などに影響が出てくる可能性があります。

土壌汚染にはどんな影響があるのか

土壌汚染が深刻な問題である理由には、汚染が長期間放置されることによって、周囲にさまざまな悪影響を及ぼす点にあります。人体や環境、生活にまで影響は及びます。

人体への影響

汚染された土が肌に触れる、あるいは大気中に漏れ出た有害物質を吸い込むなどにより、直接的に土壌汚染が人体に影響を及ぼします。

「では土壌汚染のある場所に近づかなければ大丈夫なのか」というと、問題はそう単純なものではありません。土壌汚染の連鎖によって、間接的に人体に影響を及ぼすこともあるためです。

たとえば、汚染された土が雨などで流れ出たり、土深くに浸透していくことによって河川や周辺の土地に流れ出たりしたらどうでしょう。漏れた有害物質は、農作物や魚介類を汚染します。汚染されたものを人が食べることによって、人体に影響を及ぼす可能性があります。

環境への影響

土壌汚染はスポット的なものであるものの、雨などさまざまな要因が重なることで、周辺に拡大したり、大気中や水に交じって拡散したりすることもあります。

問題なのは、有害物質の拡散によって、地球環境にまで影響を及ぼすことです。

たとえば、土地に汚染が広まれば植物の生育、河川や海に汚染が広がれば水の中の生物と、あらゆる自然環境に影響を与えてしまいます。大気中に有害物質が広がれば大気汚染につながるでしょう。

土壌汚染は放置された状態が続くと、環境汚染を引き起こすだけでなく、生態系にも影響を及ぼすことになるのです。汚染されたエリアだけでなく、さらに広範囲にわたって影響が及ぶ可能性もあります。

生活への影響

土壌汚染は人の生活へ間接的に影響を及ぼすことがあります。たとえば、悪臭などの不快感、水の油膜、汚染の不安による精神的な負担などです。

気持ちの面、日常の生活の面でも土壌汚染が影響を及ぼすことがあり、住み辛さから人が土地を離れていくほか、社会的な問題にまで発展することもあります。

土壌汚染が進んでいる場所だけでなく、周辺にも深刻な問題を与えていることを理解しなければなりません。

土壌汚染の影響を解決するには

土壌汚染の問題が認識されるようになってきたのは、近代になってからです。農用地の汚染が社会問題に発展したことから、問題視されるようになりました。

先述したとおり、汚染が放置されることにより、人体や生態、環境、さらには生活にまで影響を及ぼす可能性があります。

影響は汚染した場所だけでなく広範囲にわたるため、土壌汚染を起こさない、もしくは影響を最小限にとどめるための対策が必要です。現在では行政や事業者による対策などで、解決が図られています。

行政が行うべき解決策

土壌汚染の問題が正しく解決されるためには、基準となるルールを定める必要があります。そこで、2002年には土壌汚染対策法が制定されました。

土壌汚染対策法制定の背景にあるのは、土壌汚染による健康への影響と、対策確立に向けての社会的要求の高まりです。工場跡地の再開発で土壌汚染が顕在化したこと、さまざまな汚染事例が判明したことなどから、人々の安全と安心を守るために法律として確立しました。

土壌汚染対策法で定められているのは、土壌汚染状況の調査、指定区域の台帳調製、健康被害の防止措置、指定調査機関の設定、指定支援法人の設定です。

土壌汚染状況の調査

土壌汚染は目に見えないものですので、すぐに汚染されていることに気づかない可能性もあります。そこで法律によって制定されたのが、土壌汚染状況の調査です。

有害物質使用特定施設のうち廃止された土地の調査、土壌汚染により健康被害が起こる可能性のある土地の調査を行うことと、法律には定められています。実際に被害が出ていなくても、必要に応じた土壌汚染の調査が可能です。

健康被害の防止措置

土壌汚染による健康被害の対策のために、健康被害が生じると認められたときは、行政が所有者に汚染の除去を命じられるという規定です。また、土地所有者から汚染原因者への費用の請求、土地の形質変更の届出が定められています。

以上のように、行政は土壌汚染により被害が起きていないか管理すること、必要に応じて事業者が行う調査や対策の支援を行うことを役割として担っているのです。

事業者が行うべき解決策

事業用不動産などを所有する事業者に求められるのは、前述した行政の制定した土壌汚染対策法などの法令を守り、土壌汚染を起こさないようにすることです。

もしも調査を実施して土壌汚染が発覚した場合は、すみやかに行政に報告し、周辺の地域住民に説明する必要があります。

また、土壌汚染がわかったら、土壌汚染により被害が拡大しないための措置を取らなくてはなりません。具体的には、汚染が拡散しないよう遮断措置を行う、基準以下に汚染の除去を行うなどです。

土壌汚染が認知されるようになったことで、汚染拡大の防止技術だけでなく、汚染物質を分解する技術、除去する技術も発展してきました。使用する技術によって、除去や分解が可能な物質、処置が完了するまでにかかるコストや期間は変わってきます。

土壌汚染を放置した状態では、思うように事業用不動産の売却ができません。被害が生じれば、行政指導などを受ける可能性も出てくるでしょう。

事業者は、土壌汚染がわかったとき、必要な対策をすみやかに行わなくてはならないことを認識しておく必要があります。

土壌汚染がわかれば、事業者自身が土壌汚染の対策を行う必要があります。しかし、土壌汚染に関するノウハウがないと、どのような対策を行っていくべきか、あるいはどのような対策が適切か判断するのは難しいでしょう。

土壌汚染に関するお悩みに関しては、タープ不動産情報にご相談ください。

事業用不動産を専門的に扱っているタープ不動産情報では、不動産取引はもちろん、土壌汚染についても法令を基にしたサポートを行っています。

もしも所有する土地の土壌汚染が発覚したとしても、豊富な専門知識をもとに適切な対応が可能なので、安心してお任せください。

まとめ

土壌汚染は、人や生態、環境など、さまざまなところに影響を与えます。土壌汚染の健康被害などが発覚したことから、行政をはじめ、土壌汚染についての予防策や対策が取られるようになってきました。

土壌汚染の可能性がある土地を持つ事業者の場合、土壌汚染の問題はしっかりと認識しておくべき重要な事柄です。特に、売却を考えている場合は、土壌汚染が売却の妨げになる可能性もありますので、早めの対策と解決を行うようにしましょう。