コロナ、地価けん引役に打撃 訪日客・オフィス需要減
国税庁は1日に2020年分の路線価を発表しました。全国平均が5年連続で上昇ましたが、そのけん引役を新型コロナウイルスの感染拡大が直撃しています。訪日客は激減し、オフィス需要も陰っており、路線価の基準時点の1月と比べた4月の地価は全国4地区で下がりました。下落地区が出るのは6年ぶりで、コロナ禍の足元に資産デフレの影が忍び寄っているようです。
都道府県別の路線価の前年比変動率(標準宅地の平均値)は沖縄県が10.5%で首位、次いで東京都が5.0%でした。全国でも訪日客が多く集まる有名観光地や再開発が続く都市部などの上昇率が高い傾向にあります。
評価は1月時点でコロナの影響を反映していません。その後、環境は一変し、3月に入ると世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言、各国・地域で移動制限が広がり、国内外の人の流れが細りました。地価を押し上げてきた観光やビジネスなどの需要は蒸発しました。
既に影響は表れつつあり、国交省がまとめた1月から4月にかけての全国主要100地区の地価変動率は、横浜市や福岡市などの4地区が下落に転じました。下落が1地区でも出るのは6年ぶりです。前回19年10月~20年1月の調査で3地区だけだった横ばいも23地区に増えました。路線価で10.5%の上昇率を示した沖縄県も国交省の調査では那覇市の中心部が横ばいにとどまりました。
この国交省の調査にしても4月1日時点で、緊急事態宣言が全国に広がった同月中旬以降の経済の一段の下振れは織り込んでいません。7月1日時点の状況を示す基準地価は9月ごろに公表され、上昇傾向が続いているとは期待しにくい状況です。
また、東京都心5区のオフィスのテナント成約率は3月以降、低下しており、19年末は70%程度で推移していたのが20年5月には60%を下回りました。テレワークが広がればオフィス需要はこれまでのようには拡大しないので、再開発ラッシュで上昇が続いてきた都心の地価の基調が揺らぐ可能性があります。
緊急事態宣言が解除されても第2波のリスクが消えたわけではなく、国内では足元で1日100人超の新規感染者が出ています。米国などでは再び感染者が急増しています。コロナ禍による景気の落ち込みが長引いて資産デフレにまで及べば、投資家や企業の心理が冷え込み、経済の足かせになる悪循環も懸念されます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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