用途変更が必要になる場合とは?工場から用途変更

それまで工場だった建物を、ショップや飲食店など別の用途で使うときは、「用途変更」の手続きが必要になる場合があります。怠ると建物の持ち主に罰則規定が適用される可能性があるので注意が必要です。どのような場合に必要になるのか紹介します。

用途変更とは何なのか


まずは、用途変更とは何なのか理解しておきましょう。

用途変更の重要性

工場に限らず、建物は用途によって満たすべき基準が異なります。例えば防火性能や換気・温度・湿度・採光といった環境面などです。これらは建築基準法や同施行令で細かく定められています。基準を無視して用途変更すると、何か問題が発生したときに被害が大きくなるかもしれません。

そのような事態を防ぐために、建物の用途を変更するときは、事前に行政の窓口に申請し、建物が用途変更後の基準を満たしていると証明する義務があります。

仮に、工場の借主が飲食店に用途変更するのであれば、手続きをすべきなのは借主です。手続きにかかる費用も借主が負担します。持ち主ではありません。

ただし、用途変更の手続きは、原則として建物の持ち主の代理としての有資格者でなければ行えないため、借主は有資格者である代理人に手続きを代行してもらうのが一般的です。

もちろん、手続きに必要な書類の中には、持ち主が保有しているものが多いので、借主から用途変更を希望されたら、積極的に協力しましょう。

もし、借主が用途変更の手続きを怠って建築基準法に違反した場合は、建物の持ち主に対して罰則が適用されます。そのため、建物を誰かに貸すときは、借主がどのように建物を利用しているのか、持ち主は常に把握しておきたいところです。

用途変更は建物の持ち主にもメリットがあります。用途変更をすると、借主は多額の設備投資が必要になるため、回収しようと長期にわたって賃貸借契約を結んでくれる可能性があります。つまり安定した収入が見込めるわけです。

平成30年、用途変更の基準が部分緩和された

かつては、用途を変更する延べ床面積が100平方メートルを超える場合に、用途変更の手続きが必要でした。けれども、2018年6月の建築基準法改正により、200平方メートルを超える場合までに緩和されています。

ただし、用途変更の手続きが不要でも、建築基準法は満たさなければいけません。借主が用途変更するときは、建築基準法を満たしているかチェックしましょう。

工場を用途変更する際に申請が必要になるのはどんな場合か

用途変更は延べ床面積以外にも必要となる条件があります。手続きの流れも確認しておきましょう。

以下の場合は、役所などへの確認申請が必要

延べ床面積以外で用途変更の手続きが必要になるのは、建物を用途変更後に「特殊建築物」として使用する場合です。特殊建築物とは、建築基準法の第2条第1項第2号で定められている建物で、学校や病院、百貨店、倉庫などが該当し、工場も含まれています。

同じ特殊建築物でも、工場からショップや飲食店を含んだ店舗に用途変更するのであれば、性質が異なるので、やはり手続きは必要になります。ただし、劇場から映画館といったように、似たような用途に変更する場合は不要です(建築基準法施行令第137条第18項)。

なお、用途変更の手続きが不要でも、ほかの基準で適合しないために用途変更が認められない可能性があります。例えば「用途地域」です。第一種住居地域には50平方メートル以下の工場を建てられますが、カラオケ店やパチンコ店は建てられません。つまり同様の用途変更も認められないというわけです。

また、基本的に延べ床面積が200㎡を超える場合には申請が必要になるため、注意が必要です。

用途変更にあたっては、事前に建築士などの専門家に、可否や手続きの有無を確認したほうが良いでしょう。

手続きの流れ

用途変更の手続きが必要であれば、次に建物が「既存不適格建築物」ではないか確認します。既存不適格建築物とは、新築時こそ建設基準法を満たしていたものの、その後の法改正によって不適格になった建物のことです。そのまま利用する分には問題ありませんが、用途変更するのであれば、現在の建設基準法に適合させなければいけません。

基準を満たすための工事計画を盛り込んだら、必要書類を持参して、市区町村の窓口で手続きを行います。例えば建設課や建設指導課、建設審査課などです。

書類が受理されると、建築基準法を満たしているか調査が行われます。申請が通った後も、工事中と終了時に検査を受けなければいけません。検査に合格すると「検査済証」が発行され、ようやく用途変更が完了します。

確認申請をしないまま建物を使用すると

手続きをしないまま用途変更を行っても、すぐに罰則が適用されるわけではありません。用途変更によって基準を満たしていないことが発覚した時点で適用されます。だからといって、用途変更の手続きをしなくても良いわけではありません。

なぜなら、200平方メートルを超える特殊建築物の持ち主や管理者は、建築基準法の第12条によって定期的に点検を行い、その結果を報告する義務があるからです。点検は、建築士などの有資格者が行います。「定期報告」は義務です。これも専門家に相談すると良いでしょう。

違反が見つかった場合は改善を命令されますが、従わなければ持ち主に対して罰則が適用されるという流れです。例えば、借主が用途変更の手続きを怠っていた場合は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金です(建築基準法第99条第1項)。

罰則が適用されなくても、その状態で何らかの被害が生じると、刑事責任を問われたり、民事訴訟を起こされたりする恐れがあります。

そのため、借主が手続きをしていないことに気づいた時点で使用を中止し、必要な対応をしてもらうよう、毅然な対応を取りたいものです。

工場を用途変更をする際の手順

用途変更の手続きは、書類の準備だけでも大変です。難しいと感じたら、どこに相談すればいいのでしょうか。

必要な書類をそろえる

用途変更で必要な書類は、手続きをする市区町村によって異なりますが、検査済証か建築確認書のどちらかは必須となります。

検査済証とは、建物が完成したときに発行されるもので、その建物が完成時点の建築基準法に適合していることを証明する書類です。一方、建築確認証は、設計の段階で建築基準法に適合していると確認されたことを証明する書類です。

どちらも建物の持ち主が持っているはずですが、紛失している場合は、建築士に建物の調査を依頼し、図面を再現してもらう必要があります。その分、用途変更するまで日数と費用がかかってしまうでしょう。

なお、市区町村によっては、保管している建築確認台帳の記載事項証明書で代用できる場合もあります。

検査済証か建築確認書以外にも、建物の確認申請図や竣工図、構造計算書、消防適合証明書などが必要になるかもしれません。窓口や建築士に確認すれば、詳しく教えてもらえるでしょう。

不動産の事務手続きが難しいと感じたら、タープ不動産情報にご相談ください

用途変更は、建物の持ち主も決して無関係ではありません。書類を用意したり、定期的に点検を行ったりするのは大きな負担です。

そんなときは、株式会社タープ不動産情報にご相談ください。

弊社では、建築士をはじめとする専門家との連携によって、用途変更における持ち主の負担を軽減できます。また、自社で工事や管理を行っているので、借主の不備によって持ち主が損害を被る心配もありません。

工場からの用途変更でお悩みの際は、ぜひご検討ください。

まとめ

用途変更では、建物の使用目的が建築基準法を満たしているか確認します。基本的には借主が行うものですが、手続きにおいては持ち主の協力も必要です。適正に利用しているか確認する手間も生じます。これらの手続きに詳しく、工事や管理も行っている不動産会社に相談すれば、持ち主の負担を軽減できるでしょう。