【不動産オーナー向け】所有している倉庫を貸したい!貸し倉庫の基本

事業で所有しているものの、ほとんど利用の機会がなくなってしまった倉庫は、売却するだけでなく、必要としている法人などに貸すことができます。この記事では、倉庫を貸す前に知っておきたい、倉庫を貸す際の運用方法、倉庫として最適な物件について解説していきます。

「倉庫を貸したい!」倉庫の運営方法にはどんなものがあるのか

倉庫を貸すことについて、住宅に比べて維持コストが低い、経年劣化による賃料への影響が少ない、などのメリットがあります。借手が見つかれば、居住用不動産を運用するより長年にわたり高い利回りで運用できる可能性があるのも魅力です。

また、倉庫は建物内の空間が重要で、築年数や経年劣化による影響は少ない傾向にあります。

倉庫を貸し出すには、運営方法を考える必要があります。主な運営方法のパターンは以下の3つです。

倉庫の運営方法3パターン

1.すべて自分ひとりで行う
借り手との契約、賃料の回収、物件の管理など、すべて個人で行います。仲介業者をとおさないため賃料などすべて自身の収入にすることができる一方で、すべての運営に携わるため負担が大きいです。

貸し倉庫の業務に携わった経験があればスキルを活かすこともできますが、まったくのゼロから業務をこなすのは大変でしょう。

2.不動産管理会社に委託する
貸し倉庫の運営に関わる業務の一部、または全部を不動産管理会社に委託する方法もあります。どこまで委託するべきか、コスト面とも調整しながら、オーナー自身で委託範囲を決めることが可能です。

3.サブリース会社に一括借り上げ
貸し倉庫の運営方法として最近主流になってきたのが、一括借り上げです。サブリース会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、サブリース会社が他社に物件を貸し出します。オーナーは、サブリース会社からあらかじめ設定された賃料の一部を受け取る仕組みです。

サブリース会社による運営は、個人の運営ほどではないものの、初期投資や不動産関連の実務が要求されることがあります。

倉庫に最適な物件とはどのようなものか

同じような倉庫でも、条件によって倉庫として使いやすい物件と、そうでない物件とがあります。ここでは、貸し倉庫を活用するために知っておくべきことを順に説明していきます。まずは、倉庫の入居募集手段についてです。

倉庫の入居募集手段3つ

1.チラシ
客層を特定しない募集手段で、特定のエリアでの不特定多数への発信に向いています。

2.DM
DM(ダイレクトメール)は、特定のユーザーにメールで営業をかけて借り手を見つける手段です。特定のターゲットに対して募集を行うのに適しています。

3.インターネット(最も中心的な手段)
入居募集の手段として最も中心的な位置にあるのが、インターネットを活用した募集です。ネット上で閲覧できるページに物件を掲載して入居者を募ります。写真や動画、あるいはバーチャル案内などを利用することでチラシやDMにはないアプローチも可能です。

このように、貸し倉庫の入居募集の手段にはいくつかの方法があります。倉庫として活用しやすい物件であることも重要ですが、適した募集手段でターゲットにしっかりアプローチできているかどうかも重要です。

テナントが決まりやすい倉庫とは?

貸し倉庫でテナントが決まりやすいのは、万能性が高い物件です。特定の業種だけでなく、さまざまな業種で活かせるような物件であれば、借り手がつきやすく、稼働率が低くなるリスクも抑えることができます。

では、どのような倉庫であれば万能性が高いといえるのか、具体的にみていきましょう。

工場や倉庫に共通する7つのポイント

1.前面道路が広い
業務目的での工場や倉庫の利用は、自動車の利用にも密接に関係しています。そのため、前面道路が広いほうが有利です。

自動車の出し入れのしやすさを考えれば、前面道路は広いほどアピールポイントになるでしょう。最低でも6メートルは欲しいところです。

2.十分な駐車スペースがある
前面道路の広さと同じ理由で、自動車の利用率が高い事業用の工場や倉庫は、駐車スペースが広いほうが好まれます。

貸し倉庫のオーナーの中には、駐車スペースに関しては建物ほどには重視していない人もいます。しかし駐車スペースが狭いと、利便性を求めるテナントからの受けは良くありません。賃料に関わる建物の床面積も重要ですが、駐車スペースもバランス良く確保することが大切です。

3.天井が高い
天井が低いより高い物件のほうが、万能性は高いです。業種によっては低い天井が好まれることもありますが、天井は後からでも低くできます。しかし、低い天井を高くすることは困難です。

4.準工業地域である
市街化区域で定められている用途地域は10種類以上もあるとされています。なかでも万能性が高いのが、準工業地域です。工場を建てられる用途地域のなかでも多様な施設に転換できることから、より多くの倉庫を活用したい需要に応えられます。借り手も見つかりやすいです。

5.周りに住宅がない
工場や倉庫の周りに住宅があると、借り手の使い方次第では騒音などのクレームがくるリスクがあります。周りに住宅のない物件のほうが住宅街にある物件より万能性が高いです。

6.余計な柱がない
工場や倉庫は、余計な柱のない物件のほうが好まれます。柱が少ないと、さまざまな形で利用しやすいためです。

どのような用途にも活用できるスペースをどれだけ多く確保できるかも、貸し倉庫業で成功するためのポイントです。とはいえ、建築基準法などが理由により、柱を建物の中央に置かなくてはならない状況もあるでしょう。そうしたやむを得ない事情がある場合は仕方ありませんが、柱の数は必要最低限であることが望ましいです。

7.24時間稼働可能
工場や倉庫の借り手は、利用できる時間に制約のない物件を好みます。周りに住宅がないなど、24時間稼働できそうな環境にある物件は万能性が高いです。

「早朝であれ、深夜であれ、いつでも作業をしたい」「好きな時に荷物の出し入れをしたい」というニーズが多いので、24時間稼働できる物件であれば、テナントへの強いアピールポイントになります。

とはいえ、24時間稼働可能な工場や倉庫を実現するためには、周辺環境について考慮する必要があります。前述したように、施設の周りに住宅がある場合は、騒音や振動などの問題から、深夜や早朝の作業は行いづらくなるでしょう。24時間稼働できる物件としてアピールするのであれば、周辺環境についてよく調査しておく必要があります。

万能性の高い工場や倉庫の特徴について説明しましたが、すべてに該当する必要はありません。どれかひとつでも当てはまるような物件であれば、テナント募集での強みになります。

貸し倉庫とトランクルームの違い

貸し倉庫を運用する際に知っておきたいのが、貸し倉庫とトランクルームの違いです。両者は同じような意味で使われることもありますが、適用される法律が異なりますので明確に分けて考える必要があります。

まず、貸し倉庫は不動産の「賃貸借契約」が適用されるものを指します。倉庫という物件を貸し出すことなので、ほかの不動産の賃貸と同様に行政からの許認可は必要ありません。借り手の保管する商品などについても補償の必要がない契約です。

一方のトランクルームは、預託契約です。トランクルームとして運営するためには、国土交通省への登録届出が必要になります。貸し倉庫とトランクルームでは契約内容も関連する法令も異なりますので注意しましょう。

倉庫を貸す際のポイントや注意点

貸し倉庫として借り手と賃貸契約を結ぶ場合は、不動産管理会社に管理を任せるのが一般的です。どの不動産管理会社に依頼するかでサービスの質などが変わってきますので、不動産管理会社もきちんと見極めた上で選択するようにしましょう。

不動産管理会社選定のポイントとしては、たとえば以下のようなものがあります。

不動産管理会社を選ぶ際の4つのチェックポイント

1.契約更新時の対応
不動産の賃貸借契約では、賃貸期間を定めて契約を結ぶこともあります。しかし、当初の期間内で契約が終わるのではなく、継続、つまり契約が更新されることも多いです。このような契約更新時にスムーズに対応してくれるかが、不動産管理会社選定のポイントになります。

2.トラブルが発生したときの対応
不動産の賃貸では、賃料滞納や無断造作など借り手との間にトラブルが生じることがあります。このようなトラブルがあったとき、柔軟に対応してくれるような不動産管理会社を選ぶことが大切です。

3.テナント退去時の対応
テナント退去時、不動産管理会社が利用の状況などについてしっかりヒアリングしてくれるか、再募集をスムーズに行ってくれるかも確認しておきましょう。

4.建物診断のサポート
倉庫も経年劣化していきます。状況に合わせて、最適なタイミングで修繕の提案ができる不動産管理会社を選ぶようにしましょう。

ここまで、不動産管理会社を選定する際のポイントを紹介しましたが、ポイントを見極めるのは容易ではありません。ひとつの目安として、倉庫の賃貸実績が十分か、トラブルの対応、建物診断などを含めたトータルの対応が可能か、などが判断の目安となるでしょう。

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賃貸運用において住宅とは違う点に注意する

近年はリノベーションも多様化しており、倉庫を住宅やオフィスに作り替えて貸し出すオーナーもいます。所有する倉庫の状態や立地によっては、住宅と貸し倉庫のどちらで賃貸運用するか迷う方も少なくないでしょう。

貸し倉庫として賃貸運用を進める場合、以下の点が住宅と異なります。

1.借り手を探すのが困難な場合がある

貸し倉庫は、住宅と比べると借り手を探すのが容易とは言えません。住宅は専用の検索サイトが複数存在しますが、貸し倉庫の情報を専門とするサイトは少ないため、条件に関係なく認知度が上がりにくい特徴があります。

効率良く借り手を探すためには、チラシを配布したり看板を設置したりとある程度の費用と手間をかけて周囲にアピールすることが求められます。運用をはじめて即座に契約できるとは思わず、慎重な運用計画が必要です。

2.固定資産税の減額制度が利用できない

住宅ローン減税など、住宅を購入・所有する場合は固定資産税を一定割合減額される制度があります。一方、倉庫は仮に個人が所有するものであっても住宅とは異なるため、固定資産税に対する減税制度を利用できません。

住むことのできる住宅が土地に建てられている場合は、減税制度として6分の1(都市計画税は3分の1)の評価額にあたる税額が軽減されます。倉庫は満額の税金が生じるため、見方を変えると住宅より6倍の固定資産税・3倍の都市計画税を支払う必要があるとも言えます。

3. 管理上のリスクもある

借り手も倉庫内に住むわけではないため、住民同士の騒音などのトラブルが生じない一方で、違反利用を見つけにくいリスクもあります。ほかにも盗難や敷地内の不法投棄など利用者以外が関係するトラブルも生じる可能性が考えられるでしょう。

基本的に管理しやすい倉庫ですが、放置しすぎることはおすすめしません。定期的に巡回を入れるなど違反利用や空調関係のトラブルを確認する必要があります。

まとめ

眠っていた事業用の倉庫は、他社などに貸し出すことでも活用できます。貸し倉庫の運用は、手続きやトラブル対処など個人では難しい部分も出てくるでしょう。貸し倉庫取引の実績があり信頼できる不動産会社に管理などを委託することをおすすめします。