事業用不動産を売却するときのポイントや注意点|不動産売買の基本

工場や倉庫など、所有する事業用不動産を手放そうと考えるも、判断が正しいか悩むオーナーもいることでしょう。この記事では、事業用不動産の売買のうち“売却”に焦点をあてて、判断基準や売却の流れなどを説明します。

事業用不動産は保有?売却?判断の基準は?

「事業で使わなくなった事業用不動産は売却した方が良いのでは?」と悩むオーナーもいることでしょう。事業用不動産の売却はひとつの選択肢としてありますが、売却だけが最善の方法とは限りません。

売却時に思うような価格で売れないこともありますので、事業用不動産を保有したままうまく活用した方が良い場合もあります。事業用不動産を売却するか、あるいは保有するかは、ケースバイケースで考えるべきです。

事業用不動産を保有し続けるか、売却するか、どのような基準で判断するべきなのでしょう。ヒントとなる保有のメリット・デメリット、売却した方が良いケースに分けて解説します。

保有のメリット・デメリット

事業用不動産を保有したままにするかは、まず保有のメリットとデメリットで考えてみましょう。

■事業用不動産を保有するメリット
事業用不動産を保有し続けることで得られるメリットは、まず不動産が資産として残ることです。購入した物件ですので、家賃などの費用が発生することはありません。将来的に所有する事業用不動産を使用する可能性がある場合は、保有し続けることも選択肢として挙げられます。

また、所有権をもったまま他者に貸し出すことも可能です。賃貸物件として運用する場合、賃借人が見つかれば、事業用ですので安定した家賃収入が見込めるでしょう。

賃貸物件にした場合は、土地に対する権利が変わりますので、軽減措置により固定資産税をはじめとした税金の節税効果も期待できます。事業用不動産を他者に貸し出す場合、需要が見込める場合は、保有し続けるメリットがあるでしょう。

■事業用不動産を保有するデメリット
一方、事業用不動産を保有し続けることのデメリットもあります。たとえば、所有し続けることにより修繕費や固定資産税などの維持管理費がかかることです。

また、長期間保有することにより建物の価値が下落するデメリットもあります。価値が下落することによる減損リスクがあること、思った価格で売却できなくなる可能性がある点に注意が必要です。

ほかにも、変動金利のローンを利用している場合の金利上昇リスク、貸し出す場合の空室リスクや家賃滞納リスクなどもあります。保有し続けることのメリットは大きいか、デメリットと比較しながら検討する必要があるでしょう。

こんなときは売却を

事業用不動産を保有し続けることが難しい場合は、売却も検討します。売却した方が良いのは、たとえば以下のようなケースです。

■キャッシュフローを改善したい
事業用不動産を売却するということは、まとまった現金が入ってくるということです。事業などで資金が不足している場合、キャッシュフロー改善のための方法のひとつとして活用できます。

入金より出金が多くキャッシュのバランスが悪い場合。あるいは、将来的な予測を行ったときに支払いの実行が難しい場合で事業に支障があるときは売却を検討します。

■バランスシートをスリム化したい
バランスシート(貸借対照表)のスリム化に、オフバランスがあります。オフバランスとは、貸借対照表に記載される資産や負債のうち、不要なものを取り除くことです。つまり、売却により資産をなくすこと、返済により負債をなくすことなどを指します。

バランスシートをスリム化することのメリットは、資産保有のリスクを回避できること。そして、事業の収益性を示すROA(総資本利益率)を改善できることです。スリム化することにより、資産に対する利益率を適正にできます。

これまで所有していた事業用不動産などの資産は、売却して完全に手放すほか、リース契約、レンタルなどを活用することによってオフバランスが可能です。

事業用不動産を売却するまでの流れ

次に、事業用不動産を売却するとなったときの流れを説明します。

査定の依頼と業者の選定

査定から業者選定までの流れを、まずは見ていきましょう。

■1.複数業者に査定を依頼
売却価格は業者によって異なります。事業用不動産の売却で失敗しないためにも、複数の業者に査定を依頼し売却価格を押さえておきましょう。

■2.相場を確認しておく
売却価格は、最終的には合意した価格で決まります。価格交渉のためにも、業者に査定を依頼するだけでなく、だいたいの相場を自身でも確認しておきましょう。相場がわかっていれば売却で大きく損することを回避できます。

不動産の価値は個別に決まるものですが、周辺の土地の価格などを把握しておくと、ある程度予測することは可能です。公的機関の調査した公示価格のほか、実際の売買価格がわかる「土地総合情報システム」、「レインズマーケットインフォメーション」などが参考になります。

■3.媒介契約を結ぶ
査定額や相場などを参考に、不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約とは、不動産の売買などで営業を依頼する契約のことです。媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約があります。一般媒介契約は、複数社と契約を結ぶことが可能です。

なお、不動産会社の出した査定額はあくまで参考価格になります。査定額が高くても状況によっては値下げせざるをえないこともありますので、査定額以外の面も確認して、よく検討してから契約を結ぶ業者を選ぶようにしましょう。

売却が決まったらテナントに連絡を

媒介契約を結んだ業者の営業により購入者が決まったら、売買契約を結んで売却を実行します。売却した不動産を投資用物件としてテナントに貸し出している場合は、同意は不要ですが、通知が必要です。テナントに所有者が変わった旨を通知します。

なお、賃貸を行っている場合、テナントから預かっている敷金は引継ぎが必要です。新たに物件の所有者となる貸主に敷金を引き継ぎます。

事業用不動産を売却する際のポイント

次に、事業用不動産の売却時に、押さえておくと良いポイントを紹介します。

査定価格をきちんと理解する

事業用不動産を売却するなら、不動産の査定価格について理解しておく必要があります。査定価格とは、不動産売り出しのときの根拠となる価格のことです。

査定方法には、よく使われる取引事例比較法、投資不動産の査定に用いられる収益還元法、建物や一戸建などを対象にした原価法があります。それぞれ、計算方法や元にする数値が異なりますので、査定価格に差が出るのが通常です。

また、査定価格は、不動産会社が用いる査定方法の違いだけでなく、不動産会社の営業方針などでも差が出ることがあります。それぞれの会社で参考にする取引事例が異なったり、営業スタイルによって査定価格を高めに設定したりするケースもあるためです。

なお、ここで取り上げた査定価格はあくまでも参考価格であって、実際の売却時の価格ではありません。売却時の参考程度に考えて、不動産会社ごとに査定方法や考え方次第で査定価格に差が出ることをあらかじめ理解しておくと良いです。

ほかの不動産会社と比較して、極端に査定価格が高い不動産会社については、実際には売れないような額で設定していることもありますので、慎重に検討しましょう。

依頼する不動産会社の売却活動をチェックする

不動産会社に依頼したのは良いものの、積極的に売却活動を行う会社でなかった場合、思うように事業用不動産を売却できないかもしれません。不動産会社の売却活動は適切か、売り主自身が依頼前によくチェックしておきましょう。

確認しておきたいのは、販売用図面、REINS、広告活動の3つです。

販売用図面

販売用図面とは、購入希望者が目にする物件の情報を記載した図面のことです。内容が購入意欲を起こさせるようなものか、写真の点数やカラー、セールスポイントをチェックします。

REINS

REINSとは、不動産流通標準システムのことをいいます。売買媒介契約(専任・専属専任媒介) を結んだ物件について、不動産会社はREINSへ掲載しなければなりません。REINSに登録された物件はネットワーク上で公開されますので、販売用図面が公開されているか確認します。

広告活動

積極的な広告活動は、販売促進につながります。紙媒体、インターネット、オープンルームなど、不動産会社がどのような広告活動を行っているかチェックしましょう。すでに依頼している場合は、営業活動報告書などから広告活動の実態を把握できます。

以上のように、自社に都合の良い活動ではなく、売り主のためにしっかり動いてくれる不動産会社なのかを売却活動から確認することが重要です。

早さ優先なら不動産会社による「買取」も選択肢

不動産会社を利用するなら、個人や法人への売却を仲介してもらう以外にも選択肢はあります。不動産会社に直接物件を売却する「買取」です。

不動産会社の買取は、通常の売却と比べると売却価格は下がってしまいます。しかし、第三者への売却のように、いつ売却できるかわからず、売却が成立するまでの期間が長くなってしまうことはありません。

売却までが早く、手続きの手間も少ないのが不動産会社の買取を利用するメリットです。とにかく早期に売却したいのであれば、買取も選択肢に入ってくるでしょう。

売却時にかかる諸費用に要注意!

事業用不動産の売却については注意したい点があります。売却額がそのまま入ってこないことです。売却では印紙代や仲介手数料などの諸費用がかかります。売却益があるときは、譲渡所得税の納税義務が発生する点も注意が必要です。

売却価格がそのまま入るのではなく、費用を差し引いた額が実質的な収益となります。売却時の諸費用は状況により変わってきますが、ここでは譲渡所得税をピックアップして見ていきましょう。

譲渡所得税とは?

譲渡所得税は、土地や建物を売却したとき、課税譲渡所得額がある場合に納税義務が発生します。課税譲渡所得額とは、以下の計算で導き出した額のことです。

売却による収入額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得額

取得費は、取得額などから建物の減価償却費を差し引いた額、あるいは譲渡収入5%の概算額。譲渡費用は売却時にかかった費用のことです。

課税譲渡所得額にかかる税率は、譲渡した年の1月1日時点で所有が5年を超えているか、超えていないかで判断します。5年を超えている場合は長期譲渡所得となり、税率20.315%、5年以下の場合は税率39.63%です。(税率は、所得税、住民税、復興特別所得税を考慮した税率)(※個人の場合

最終的な譲渡所得税は、課税譲渡所得額に税率をかけて計算します。

専門家のサポートがあると安心

事業用不動産の売却は、査定額や相場などを確認しておいた方が良いのはもちろん、売却時の費用についても考えておく必要があります。しかし、はじめての事業用不動産の売却では、時間も手間もかかってしまうでしょう。

事業用不動産の売却を考えるなら、専門的なアドバイスを受けられたり、手続きの代行をお願いできたり、サポートがあると安心です。

タープ不動産情報は、数々の専門家と連携しています。専門家と連携した売却のお手伝いが可能です。まずは、タープ不動産情報へお問い合わせください。

まとめ

事業用不動産の売買では注意点も多くあります。売却に失敗しないためには、事業用不動産の売買に詳しい専門家からサポートを受けるのが良いでしょう。