不動産オーナー向けの保険にはどのような特徴がある?

不動産に関連する保険は、損害リスクに備えるための重要なものです。賃貸不動産のオーナーであれば、保険料は必要経費と考えて予算計画を立てる必要があるでしょう。この記事では、不動産オーナーが知っておきたい損害保険の概要と選び方のポイントを解説します。

不動産オーナー向け保険の種類

事業として不動産を所有する不動産オーナーが加入を検討すべき保険は、総称して損害保険とよばれています。ここでは、損害保険のうち、不動産オーナー向けの保険の種類を見ていきましょう。

火災保険

不動産オーナーが加入すべき損害保険のうち、最も重要なのが火災保険です。火災保険は入居者も基本的に加入しますが、入居者の火災保険は家財や不動産オーナーに対する賠償などで、十分に損害をカバーできるわけではありません。

自然災害による損害など、損害を幅広くカバーする意味で、不動産オーナーの加入する火災保険は重要です。火災保険の主契約は、以下のように大きく2種類に分けられます。

■住宅火災保険
住宅火災保険は、建物と家財を対象にしたベーシックな火災保険です。火災のほか、風災、雪災・ひょう災、落雷、破裂・爆風による損害を補償します。住宅総合保険と比べると、掛金は安価です。

■住宅総合保険
住宅総合保険は、不動産に関連するさまざまな損害をカバーする保険です。

住宅火災保険の対象になる損害のほか、水災などの自然災害、水漏れなど建物内部の破損、自動車などによる外部からの衝突による損害、盗難、など対象の損害の幅が広く設定されています。(※ただし保険会社によって保険の範囲は異なります。)

このように、火災保険でも主契約の種類によってカバーできる範囲、コストが異なる点には注意が必要です。コストをできるだけ抑えたいなら住宅火災保険、広く補償を受けたいなら住宅総合保険を、事前に種類を決めた上で保険会社を選択します。

地震保険

地震保険は、地震による損害のほか、噴火や地震による津波などの損害を補償する損害保険です。国が一部費用を負担している特殊な保険で、単体での加入はできません。主契約の火災保険とセットで契約することになります。また、どこの保険会社で加入をしても保険料は一律です。

一部損、小半損、大半損、全損と、損害の程度によって支払いを受ける保険金が決まるしくみで、火災保険の30~50%までが保険金による補償範囲です。ただし、居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円までが限度となっています。

追加できる特約の例

不動産オーナー向けの火災保険では、自然災害以外のリスクに備えるための特約も付加できます。特約とは、主契約にオプションで付加できる契約のことです。建物の条件、状況に合わせて付加することによってリスクを軽減できます。

この項では、火災保険に付加できる特約の例を見ていきましょう。
(※ただし、特約は保険会社で異なるため、必ずしも付加できるとは限りません。)

家主費用補償

家主費用補償は、特定事由事故(入居者の病死、孤独死、自殺、犯罪死など)が起きた場合に家賃の損失などを補償する保険です。契約によっては、原状回復費や遺品整理の費用などの補償も受けられます。

(※原状回復費は特定事由事故で損害を受けたときに要した清掃や消毒などの費用で、通常の劣化のための修復は指しません。物的損害があった場合限定です。)

なお、入居者に原状回復責任がある場合は、入居者が加入する火災保険の「借家人賠償責任補償特約」の適用対象になることもあります。

家賃補償

家賃補償は、災害などを理由に修繕が必要となったときに利用できる保険です。修繕中で空室が続いたことにより減収した家賃を補償します。

施設賠償責任保険

施設賠償責任保険は、建物の欠陥などを理由に人やものに損害を与えたときに使える保険です。法律上、建物の欠陥などで賠償責任を負うことになったときに保険金が支払われます。単独でも契約できますが、火災保険の特約に含まれる場合は火災保険に付加して契約することが可能です。

不動産オーナー向け火災保険料の相場

火災保険料を必要経費と考える以上、不動産オーナーとしては相場が気になるところだと思います。相場はどれくらいなのでしょうか。この項では、相場と火災保険料が決まる要素を解説します。

火災保険料の相場はどこの保険会社でも大差なし

火災保険料は、損害保険料率算定機構の参考保険料率をもとに計算されているため、保険会社ごとに大きく料金が変わることはありません。火災保険料を10年分一括で支払った場合の、火災保険料と火災保険料に紐づく特約の保険料は数万円程度です。

ただし、建物の構造や所在地など、火災保険料を決める要素によっては、相場より離れた火災保険料になることもあります。

保険料が決まる要素

火災保険料の相場の説明で、建物の構造などで火災保険料が変わると説明しました。ここでは、建物の構造含め、保険料が決まる要素について解説します。

■建物の構造
火災保険料を大きく左右するのが、建物の構造です。建物の構造は、コンクリート造などの対価性のある共同住宅(M構造)、共同住宅以外の耐火性または準耐火性のある建物(T構造)、木造など(H構造)に分けられます。

保険料が安いのは、耐火性の高い建物です。M構造、T構造、H構造の順に保険料は上がります。

■不動産所在地
保険対象となる事故の発生率は所在地によって異なるため、同じような契約でも、所在地によって火災保険料が変動することがあります。

■建物の延床面積
補償の範囲が変わってくるため、延床面積が広いほど火災保険料は高くなります。

■契約期間
火災保険は最短1年、最長10年の契約が可能です。保険の契約期間は、長いほど割引率が上がり、保険料は安くなります。

■補償範囲
対象を建物のみ、家財のみ、両方にするか、また対象の損害の範囲をどうするかでも火災保険料は変動します。特約で補償範囲を広くするなど、補償範囲が手厚いほど火災保険料も高いです。

■建物の保険金額
損害を受けたことで支払われる保険金の限度額は、建物の状況に応じて再取得した際に保険金でカバーできるように設定するのが一般的です。ただし、火災保険には保険金額を増減できる商品もありますので、仮に減額した内容で契約すれば保険料は安くなります。

保険を選ぶときにチェックするポイント

ここまで、火災保険の特徴と保険料決定の要素について説明してきました。保険会社で相場は大きく変わらないので、補償対象などの比較が重要な要素となります。この項では、火災保険を選択するときにチェックしたいポイントを見ていきましょう。

補償対象、適用範囲をチェック

火災保険に加入したから安心とはいえません。火災保険にも保険が適用できる範囲に限界があります。

標準装備の補償はもちろんのこと、建物の欠陥による補償など将来のリスクに備え、特約の加入も必要になるでしょう。ベーシックな火災保険だけで比較するのではなく、どのような特約に加入できるのか、補償対象は十分かも確認しておきたいところです。

また、グレーゾーンで保険金が支払われないケースもあります。入居者の家財だけか、建物だけか、両方が対象になるかなど、保険の対象と支払われないケースについて事前に確認しておきましょう。

自己負担額のシミュレーションをする

不動産オーナーにとって火災保険料や特約の加入は重要だと説明しましたが、ただ補償を厚くすれば良いわけではありません。事業として不動産を所有する以上、補償だけでなくコスト面も考える必要があります。

まず、保険料をどのようにして支払うかです。月額払いよりも一括の方が保険料は一般的に低くなりますが、キャッシュフローとの兼ね合いもあります。キャッシュフローが悪化しすぎないように、シミュレーションしながら支払方法を考えていく必要があるでしょう。

また、保険料を抑えるには免責金額を設定する方法があります。免責金額とは、免責金額を超えた分を保険金として受け取れるというものです。損害発生時にどの程度まで自己負担が可能なのかも考え、免責金額の設定も含め、必要なコストを計算していくべきです。
コスト計算が難しい場合や保険について悩んでいる人は、プロに一度相談をしてみましょう。

タープ不動産情報では、不動産オーナー様からのさまざまな相談を受けています。これまでの実績から、オーナー様所有の建物の状況や将来の希望を加味した最適なプランの提案が可能です。資金計画については各種専門家をご紹介していますので、まずはタープ不動産情報までご相談ください。

まとめ

保険は、将来のリスクに備えるためのものです。不動産オーナーの場合、火災保険をはじめ地震保険、施設賠償責任保険などの火災保険の特約について、入居者の火災保険ではカバーできない部分の補償をどうするか考えていく必要があるでしょう。

しかし、補償ばかり手厚くすると、今度はコスト増で経営を圧迫する問題も発生します。キャッシュフローが悪化しないように、支払い方法や免責金額なども含め、補償とコストをどうするかバランスの良い計画を立てることが重要です。