不動産の名義変更時に掛かる税金は?実際のケースや流れを基礎から解説

所有する不動産を名義変更する場合、税金が課税されます。どのようなケースで、どのような税金がかかるのでしょうか。この記事では、不動産を所有するオーナー向けに、名義変更時にかかる税金と、名義変更が必要になるケース、手続きの流れについて解説します。

不動産の名義変更時に掛かる税金とは

総称して、不動産の名義変更に掛かる税金と言ったりもしますが、名義変更時の税金はひとつでなく、さまざまなものがあります。たとえば、以下のような税金です。

■1.不動産取得税
不動産取得税は、相続で不動産を取得した人を除き、名義変更後に不動産の所有者になった人に課税される税金です。都道府県が課税主体で、土地と建物の取得に対して課税されます。

税額は固定資産税評価額の4%。(特例で2021年3月31日まで3%。)宅地は、特例により固定資産税評価額の2分の1に税率をかけて計算します。中古住宅など取得した不動産によっては、そのほか特例の適用が可能です。
(※特例は変更になる可能性もありますのでご注意ください。)

■2.登録免許税
登録免許税は、不動産登記など登記に関連して課税される税金です。名義変更に関わる所有権の移転登記では、不動産の価格に対して一定の税率が課税されるようになっています。

土地や建物の売買による税率は1,000分の20(土地については2021年3月31日まで1,000分の15に軽減)、相続は1,000分の4、贈与や交換などは1,000分の20です。住宅用家屋の移転登記は1,000分の3の軽減、特定の増改築が行われた住宅の移転登記は1,000分の1への軽減措置があります。

■3.印紙税
印紙税は、契約書などの文書に課される税金です。不動産の譲渡(売却や贈与)契約書の、記載された金額(譲渡の金額)に応じて税額が決まります。なお、不動産価格の記載のない贈与契約書の印紙税は200円です。

■4.所得税
所得税は、不動産を譲渡することで利益を得たときに課される税金です。譲渡価格から、取得費(土地の価格と建物の減価償却後の残高など)と譲渡費用、特別控除を差し引いた残高に課税されます。マイホームを譲渡したときの特別控除は3,000万円(上限)です。

税率は、対象の不動産を売却した年の1月1日時点で、所有が5年を超えているかどうかで異なります。5年を超えている場合は長期譲渡所得になるため所得税15%(住民税5%)、5年以下の場合は所得税30%(住民税9%)です。

■5.贈与税
贈与税は、財産を受け取ったとき、受贈した人の利益に対して課される税金です。暦年課税の場合、基礎控除110万円を超える部分に課税されます。税率は、10~55%の累進課税です。

ただし、相続時に税金を精算する相続時精算課税を選択する場合は、特別控除(複数年の累積)2,500万円を超える部分について20%の課税となります。ほかに、婚姻期間20年を超える夫婦間の居住用不動産の贈与であれば最大2,000万円までの配偶者控除が可能です。

■6.相続税
相続税は、相続によって一定の財産を得た人に課される税金です。相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、相続する財産の評価額から非課税財産や債務を差し引いたあと、基礎控除を差し引いたときに課税対象となる額があれば相続税が課されます。

不動産も相続する財産に含まれる財産の一種です。ただし、相続する不動産の種類によっては評価額が大きく軽減されるものもありますし、配偶者の相続にいたっては大幅な配偶者の税額の軽減を適用できます。

不動産名義変更が必要になる4つのケース

次に、不動産の名義変更が必要になるケースについて見ていきましょう。

1:贈与

相続時のトラブルを避けるために、親族間などで生前贈与が行われることも多いです。このような生前贈与の場合も、名義変更を実施しなくてはなりません。名義変更の手続きは、不動産を贈与する側、不動産の贈与をされる側、共同での手続きが必要です。

2:遺産相続

不動産の所有者が亡くなり相続が発生したときも不動産の名義変更が必要です。厳密にいえば名義変更の申請期限はないため、名義変更をしなかったことで罰則があるわけではありません。

しかし、登記をそのままにしておくと、新たな相続が発生したとき、遺産分割に問題が生じたり、手続きが複雑になったりすることもあります。相続が発生し、相続人間での遺産分割が確定したら、速やかに手続きを行うのが良いでしょう。

相続による名義変更については、所有者である被相続人が亡くなっているため、基本的には相続人が名義変更の手続きを行います。

3:財産分与

離婚により財産を分配する手続きを財産分与といいます。離婚による財産分与では、共同名義にしている不動産の所有権の移転、夫所有の不動産を妻へ、あるいは妻所有の不動産を夫へ移転する場合に名義変更が必要です。

基本的には、不動産を贈与する側、不動産を贈与される側が共同で手続きを行うことになります。

4:売買

不動産を売却する場合、あるいは購入する場合、所有者が変わるため、名義変更が必要です。基本的には売り主と買い主、共同で手続きすることになります。不動産仲介会社がかかわる通常の不動産売買については、手続き自体は司法書士が行うケースが多いです。

不動産名義変更の手続きの流れ

不動産の名義変更が必要なケースと手続きを行う人が整理できたところで、名義変更の手続きの流れについて見ていきましょう。

1:必要書類を準備する

不動産の名義変更をするには、まず必要な書類を準備することからはじめます。必要な種類は、名義変更のケースによって異なりますので、事前の確認が必須です。

また、書類によっては発行から3ヶ月など期限が定められているものもあります。必要な書類だけでなく、期限もよく見ておくようにしましょう。それでは、ケース別に必要な書類を紹介していきます。

贈与

不動産の生前贈与などによる名義変更では、以下のような書類が必要です。

・贈与契約書
・権利書(法務局発行の登記識別情報)
・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・住民票(マイナンバーが記載されていないもの)
・固定資産評価証明書(法務局で閲覧発行できる最新年度のもの)

基本的には法務局で発行されたもの、住所のある市役所で取得したものになりますが、贈与契約書だけは作成しなくてはなりません。贈与契約書については、贈与者、受贈者、贈与契約日、贈与対象の不動産、贈与する旨の記載が必要です。

遺産相続

遺産相続による不動産の名義変更では、以下のような書類が必要です。

・住民票(本籍地が記載されているもの)
・固定資産評価証明書(法務局で閲覧発行できる最新年度のもの)
・戸籍謄本と被相続人の戸籍の附票
・登記識別情報
・登記原因証明情報

住民票や戸籍謄本については、基本的にすべての相続人のものを用意しなければなりません。このほか、遺産相続が遺言による場合は遺言書、遺産分割による場合は作成した遺産分割協議書や印鑑証明書が必要です。

財産分与

離婚による財産分与で不動産の名義変更をする場合、以下のような書類を用意します。

・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・固定資産評価証明書(法務局で閲覧発行できる最新年度のもの)
・住民票(マイナンバーが記載されていないもの)
・登録識別情報
・財産分与契約書
・戸籍謄本
・離婚協議書

売買

売買による不動産の名義変更では、以下のような書類が必要になります。

・売買契約書
・権利書(登録識別情報)
・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・住民票(マイナンバーが記載されていないもの)
・固定資産評価証明書(法務局で閲覧発行できる最新年度のもの)

このほか、売り主が買い主に手続きを依頼する場合は、委任状が必要です。売買契約書は、当事者などが作成したものを用意します。

2:法務局に申請する

不動産の所有者情報は、取引が安全に円滑に行われるよう登記され、一般公開されます。名義変更を確実に行うには、必要書類をそろえた上で、管轄の法務局への登記申請が必要です。このとき、登録免許税などの税金を納めます。

登記については審査に1~2週間かかるのが通常ですので、その場ですぐに登記が完了するわけではありません。審査後に登記、つまり名義変更の手続きが行われます。

不動産名義変更は専門家に依頼して効率良く進めよう

ここまで、不動産の名義変更に掛かる税金と名義変更が生じるケース、必要な手続きについて説明してきました。

手続きに関しては、名義変更のケースによって必要書類が複雑など、個人で済ませるには難しい部分もあります。関連する税金についても、正確に計算するのは難しい面もありますので、専門家に依頼するのが確実です。

不動産の名義変更についてお考えなら、まずはタープ不動産情報にご相談ください。

タープ不動産情報なら弁護士、税理士、司法書士など専門家との連携によりワンストップで対応できますし、税金に関するお悩みにも対応しています。工場や倉庫専門の不動産会社ですので、事業用の不動産についても安心してお任せいただけます。

まとめ

不動産の名義変更についてはさまざまなパターンがあり、状況によって関連する税金が課税されることがあります。税金の申告や納税が必要な場合で、無申告、あるいは申告をしても不備があると無申告加算税や延滞税などの税金がさらに課されることがある点に注意が必要です。

不備なく手続きを済ませ、納税するためにも、専門家や専門家と連携している不動産会社にまずは相談することをおすすめします。