【解説】事業用不動産の活用方法とメリット・デメリット

使っていない土地や建物があるなら、事業用不動産として活用することで、収益をもたらしてくれる可能性があります。そのまま何もしなければ、維持費や税金がかかるだけでしょう。

この記事では、事業用不動産にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、4種類の活用方法別に紹介します。

事業用不動産とは

事業用不動産とは、収益を得るために利用や所有される不動産です。居住用の不動産とは区別されています。

仕事場としての物件だけでなく、投資目的で所有する建物や土地も事業用不動産です。前者であれば事業所や工場、倉庫、後者であればマンションや別荘、リゾート施設などが該当します。

事業用不動産の活用方法は、大きく分けて4種類ありますが、いずれも目指すゴールは「経費を抑えて最大限に収益を得る」です。そのためには、活用による成果や市場の動向を見極め、戦略を立てる必要があります。

事業用不動産の活用方法1.買う

事業用不動産の活用で代表的な方法とは、「買って運用する」ことです。
そのメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

事業用不動産を買うと、そのときから「資産」になります。

企業の場合は、自社の価値や信用を高めてくれるだけでなく、融資を受けるときの担保としても有効です。

また、建物購入費用は減価償却として長期にわたって経費計上できるので、現金よりも節税効果を期待できるでしょう。

個人で買う場合では、万が一のときに残された家族へ資産を残せるのがメリットです。仮に借入金があったとしても、団体信用生命保険に加入していれば、亡くなった後の残債を家族が返済する義務はありません。

さらに、事業用不動産を買うことはインフレ対策にもなります。インフレになると現金の価値が下がる反面、物の価値が上がるので、不動産の値上がりも期待できるでしょう。

デメリット

不動産を買うときは、まとまったお金が必要になります。ただし、借り入れができれば、収益から返済できるので、自己資金は少額で済むでしょう。

また、維持管理に費用や労力がかかるのもデメリットだといえます。特に建物が老朽化すると、大きな負担になります。

さらに、不動産ならではのリスクもあります。

たとえば、物件の価値が下落するリスクがあります。土地や建物の評価額が下がった場合、その状態で売却すると大きな損をしてしまうでしょう。市場には波があるので、投資目的で所有する場合は、売買のタイミングを見計らわなければいけません。

また、購入資金を変動金利で借り入れている場合は、金利上昇リスクが発生します。近年は低金利が続いていますが、過去には長期プライムレートが9.9%まで上昇したこともあります(1974年10月~1975年7月)。

金利が上昇すると、返済の大半が利息に充てられてしまい、元本がなかなか減りません。不動産の借入金は高額になので、これは大きなリスクです。

ほかにも、災害リスクがあります。特に日本は台風や地震など自然災害が多い国です。損害保険の加入で損失はある程度はカバーできますが、その分の保険料がかかります。100%カバーしようとするほど高額です。

事業用不動産の活用方法2.貸す

買った事業用不動産は、「誰かに貸す」という活用方法もあります。

メリット

貸すメリットは、賃料収入を得られることです。

入居者がいる限り、継続して賃料が入ってきます。特に事業用の物件は、長期での契約が多いため、安定した収入源になるでしょう。

建物であれば一棟丸ごと、もしくは区分ごとに貸したりできます。

土地であれば、駐車場として貸すだけでなく、借地権を提供して建物を作ってもらうことも可能です。事業用の定期借地権であれば、契約期間が終わったとき更地に戻して返却してもらえます(契約期間が10年以上30年未満の場合)。

借地権の提供は後述する賃貸経営のリスクとは無縁なので、需要があれば少ない負担で大きな収益を得られるでしょう。

デメリット

貸す場合のデメリットは賃貸経営のリスクがあることです。

たとえば、空室が発生すると賃料は入ってきません。退去されると、すぐに次の入居者が見つかるとは限らず、その間は収益が途絶えてしまいます。

また、入居者を管理する手間も発生し、何かトラブルが発生したときはオーナーが矢面に立たなければいけません。管理会社に依頼する方法もありますが、委託費が発生します。

ほかにも、新たに建物を作ったり、既存の建物を改装したりして貸し出すなら、それぞれに応じた資金が必要です。借り入れで調達した場合は、見込みどおりに賃料が入らないと、返済できなかったり、売却しても完済できなかったりする恐れがあります。

自分の所有する土地や建物にどれくらいの需要があるのか、事前に見極めておくことが大切です。

事業用不動産の活用方法3.借りる

事業用不動産を自分で買って所有するのではなく、借りて活用する方法もあります。

メリット

借りる場合、購入よりも低い資金で不動産投資を始めることができます。また、維持管理の費用や労力、災害のリスクは、物件のオーナーである貸主が負担します。

事業所として使う場合は、そのときの業績や規模に合わせて、最適な事業用不動産を選べることができます。
借り換えによって、事業規模の拡大や縮小も柔軟に対応できます。デフレ時は現金の価値が上がって物の価値が下がるので、安い賃料で借りられるかもしれません。

デメリット

借りている事業用不動産は、どんなに賃料を払っていても、所有権はオーナーである貸主にあります。

長期にわたって同じ事業用不動産に賃料を払い続けていると、買うのと同じ金額を費やす恐れがあります。だからといって、自分の資産にはなるわけではありません。

また、買う場合ではインフレはメリットのひとつでしたが、借りる場合では逆にデメリットとなります。不動産の価値が上がるので、支払わなくてはならない賃料も値上がりしやすくなります。

ほかにも、「借り換えたいときに、最適な事業用不動産が見つかるとは限らない」という点もあります。最適な物件が見つかるまでは、無駄な賃料を払ったり、不自由な思いをしたりするかもしれません。

事業用不動産の活用方法4.売る

いっそのこと売って手放すという活用方法もあります。企業が経営を改善したいときに、よく用いられる方法です。
売却した場合のメリット・デメリットについて紹介します。

メリット

事業用不動産を売ると、まとまった現金が入ります。これによって借入金を返済したり、キャッシュフローを改善したりすることが可能です。

また、「オフバランス化」も図れます。オフバランス化とは、バランスシート(賃借対照表)から資産を減らす手法です。

企業は、少ない資産で多くの利益を生み出すほど、評価が高まります。また、資産の価値が下落して、負債の割合が多くなると、債務超過になりかねません。

事業用不動産を売って借入金を返済すれば、資産も負債もスリムになり、どちらも実現できるでしょう。

ほかにも、維持管理にかかる費用や労力を削減できるメリットもあります。

もちろん、より収益性の高い事業用不動産を購入するための資金に充てることも可能です。

売った後も業務を行うための建物が必要であれば、別の事業用不動産を借りなければいけません。

こういった場合、「リースバック」というサービスを利用すれば、売却後も同じ事業用不動産を、そのまま利用できます。リースバックとは、買主が貸主となって、売主と賃貸借契約を結んでいる状態です。期限は定められていますが、買戻しもできます。

デメリット

売るときは、不動産会社への仲介手数料や諸費用を払わなければいけません。また、売却益が発生すると、譲渡所得とみなされ、法人税に反映されます。

もちろん、事業用不動産から収益を得ていた場合は、売ってしまうとゼロになるので、本当に手放すべきか、慎重に検討したいところです。

事業用不動産の有効活用の相談先

4つの活用方法について紹介してきましたが、それぞれにメリット・デメリットがあり、どれが適しているかは本人(企業)や事業用不動産の置かれている状況によって異なります。

タープ不動産情報では、数多くの事業用不動産を手がけてきた実績に基づいて、どのように有効活用すべきかアドバイスが可能です。専門家と連携し、お客様の不安や悩みを解消できる体制を整えております。

使わない土地や建物を活用しようとお考えの際は、ぜひご相談ください。

まとめ

事業用不動産を活用するには、買う・貸す・借りる・売るという4つの方法があります。それぞれにメリットやデメリットがあり、どれが良いかは一概には言えません。

どのように収益を得られるか、あるいは得たいのか明確にして、最適な方法を選びましょう。不動産運用に詳しい専門家のアドバイスも参考になります。